松下幸之助の相続資産、三代で20分の1に

 パナソニックの株主総会が26日、大阪城ホール(大阪市中央区)で開かれた。昨年の総会で、約7700億円もの最終赤字に激怒する株主にV字回復を誓ったのに、「わずか4カ月後に再び7500億円もの赤字だと業績を下方修正した。株主総会を愚弄している!」と厳しい声が飛んだ。一方、今総会の招集通知で、昨年7月に亡くなった、創業家の松下正治氏保有株半分が、長男である松下正幸副会長に移ったことがわかる。創業家の影響力維持のために個人名で株を保有していると、3代で資産をなくすといわれる日本の相続税の現実も垣間見えた。

復配要望に「明言できない」


 総会の所要時間は2時間1分で、過去最長だった前年とほぼ同じ。出席株主は4508人で、過去最高だった12年の5630人を下回った。朝から強い雨が降っていたことが影響した。

 昨年の総会後に就任した津賀一宏社長は、「2013年度に最終利益500億円を確保することは、復配に向けての最低限の利益水準」と前半に説明したが、後半に株主から「いつ復配できるのか」と質問が出ると、「いつとは明言できない」と慎重だった。ただ、「復配が最優先事項。信頼して任せてほしい」とていねいに呼びかけた。

 株主からは業績不振への不満の声が相次ぎ、「株主が納得いくまで発言できるよう、時間で質問を打ち切らないでほしい」と怒り狂う株主も。

 2期にわたる最終赤字の合計額は1兆5000億円を超えるだけに、津賀社長の応答は真摯そのもの。「質問者をあと2人に絞りたい」と呼びかけたときにも、「株主の皆様のご賛同がいただけるなら…」と断りを入れ、会場の賛同を得るなど配慮を尽くした。

 「赤字の責任をとらないまま会長に“昇格”した前社長(大坪文雄氏)に比べると、ていねいに答えてくれた」(70代女性株主)と受け止められていた。

松下家の株2000億円が94億円に

 一方、前総会後に取締役を退任し、翌月に99歳で亡くなった松下正治前名誉会長は959万8000株を持つ大株主でもあった。あの株はどこにいったのか。

 今総会の招集通知議案には、総会で取締役として選任を受けた松下正幸副会長の所有株が書かれている。正幸氏は正治氏の長男で、その保有株は1272万3100株。前年には792万4100株だったことから、正治氏の持ち株のきっちり半分が正幸氏にわたったことが読み取れる。あるOBはこう話す。

 「子供3人と配偶者で相続したようなので、正幸氏の法定の取り分は6分の1。ほかの資産で相続税を払う努力をし、最大限の株を正幸氏にもたせたのだろう」

 招集通知の報告の中には、4人の取締役に対し総額18億5500万円の退職金を払ったことも記載されている。そのほとんどが、昭和22年から取締役を務めた正治氏に対するものだったはずで、現金支給された退職金は、相続税の支払いに消えた可能性が高い。

 創業者、松下幸之助は2000億円を超えるパナソニックグループ株を遺したといわれている。正幸氏の保有株は、時価に換算すると約94億円。ほかにも資産はあるだろうが、株だけの単純計算では、3代にして資産はなんと、20分の1になったようだ。

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