解任社長名は「削除」で逃げ切った川崎重工

「削除」をうまく使った

 「株主は、納得いかなければ、重要事項が周知されないままに開かれた総会は無効だと、裁判所に訴えることができる。だが、今回の場合、裁判所が取り上げない可能性が高い」

 3号議案は、13人全体の選任をもとめたもので、このなかから3人を削除するとした。取締役の個別名で選任を求めたものではなく、かたまりの中から3人を削除するだけだったといいたいようだ。

 「議案を増やしたり、取締役を増やしたり、といった“増”に裁判所は厳しいが、“削除”には緩い」とも。村山社長は、今回のケースは「変更」ではなく、「一部削除」と強調したのも、こうした背景があるようだ。

 裁判所が取り上げないと予測する理由は、「今総会が無効だったとし3人が取締役に選任されたとしても、取締役会は再度同じ選択をするから、結局、3人は解任される、と裁判所は予測する。そうなると、再度総会をやるコストのほうが、株主には多大な損失になる可能性があり、合理的ではないから」というわけだ。

 前社長らの解任は株価上昇につながり、「会社にとってよい判断だった」と総会で発言する株主も複数あった。だが、「株価とこれとは別問題で、解任の理由が周知徹底されない総会は、やはり納得しにくい」(40代株主)と話す株主もいた。

 開催時間は、昨年より約40分長い2時間17分だった。苦労したのは事務局にちがいない。出席者がどこまで増えるのか予測しにくかったはず。手土産の菓子をいくつ用意したらいいのか、相当悩んだに違いない。

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