年収1000万円世帯なのに貧乏なわけ

 年収1000円の世帯では2011~16年までに、可処分所得が11年の767万8300円から706万1500円と、1年間で61万6800円も減少する(日経ビジネスの試算による)。特に今後は、14年4月からの消費税5%から8%へのアップ。さらには、15年10月からの8%から10%へのアップという大イベントがその後の家計への大きなダメージとしてのしかかることになる。年収1000万円世帯からも悲鳴が聞こえてくるが、節約、スキルアップ、共働き、資産運用などの対策に迫られている。

 上の試算では、実は年収1000万円世帯が最も割を食うのだ。2011年から16年までの可処分所得の減額比率は次のとおりとなる(40歳、妻は専業主婦、子供二人家庭)。

・500万円  7.57%
・800万円  6.72%
・1000万円  8.03%
・1500万円  6.45%

 実際に世帯年収1000万円世帯はどう感じているのか。筆者の知人である、40歳代前半の大手マスコミ勤務Aさんに聞いてみたが、豊かさの実感はあまりないようだ。

 Aさんは妻と子供1人がいる。このたび地方転勤の辞令が出たことを機に、金銭的な負担を軽くするために、妻と子供を妻の実家に残しての単身赴任を選んだという。

 転勤が決まって、妻に貯蓄金額を確認したそうだ。あまり意識したことがないAさんにとっては、予想以上にあったそうだが、金額は500万円未満で、今後は子供の教育費用なども必要となるために油断はできないという。

 また、会社の給料は頭打ちで「ボーナスも前年比では減少だし、将来はまったくわからない」と嘆きつつも、極力節約を意識するようになったそうだ。妻は実家住まいのため専業主婦のままでもやりくりはできると踏んでいるが、「まずは車の買い替えを延期して、できるだけ長く乗り倒したい」という。さらに、今後は良い投資先があれば「考えてみたい」という。

 日経ビジネスが1000万円世帯に対して「生活防衛のために何をやっているか」をヒヤリングしたところ次のような結果だった。
・「語学や資格などスキルアップのための勉強」
・「専業主婦だった妻がパートに」
・「転職準備」
・「家庭に眠る資産の現金化」
・「住み替えなど住居の見直し」
・「ファイナンシャルプランナーに相談」
・「預貯金をやめ投資信託などで資産運用」

 年収1000万円世帯に対する資産運用アドバイス経験が豊富なアブラハム・プライベートバンク株式会社によると、「この世帯は、いつかはゆかしで、月10万円以上の海外積立をしている人が多い。 公的年金が頼りにならないことを知っているから。タイミングとしては、ちょうど今開始する人が多い。将来の円安とインフレを見越して、もはや貯金はリスクが高いと分かっているからだろう」とのこと。

 年収1000万円世帯なのに貯金が少ない家庭には、なぜかウォーターサーバーの保有率が高いのは有名な話である。中身がただの水道水にならないように、これからは工夫が必要になる。

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