サラリーマン調査、退職後の備え「0円が4割」の一方で、「1億円」も

 「生活費が不足すること」が54.2%。これは30、40歳代を中心とする現役世代が老後について、最も不安に思っていることだ。フィデリティ退職・投資教育研究所がこのたび発表した「サラリーマン1万人アンケートにみる退職準備度合い」の調査結果によるもの。また、「退職準備金0円」という人が4割も存在し、老後の生活費不足はなるべくしてなるという感もあり、今から暗い将来を暗示しているかのようだ。

 この調査は、20~50代の全国の男女1万1507人を対象にインターネット上で行った。同研究所は3年前にも同じ調査を行っており、2回目となる今回で回答がどのように変化したかを比べてみるのも興味深い。
 
◆前回と今回の調査結果の主な違い

          2010年    2013

退職準備金0円   44.3%    40.3%

退職準備の平均額  515.6万円  627.6万円

今の高齢者より生活 30.3%    36.9%
水準が悪化

退職後の楽しみ   11.5%   17.8%
「特になし」と回答   

退職後のイメージを 16.7%   34.8%
「いきいき」と回答  
(年収2000万円以上)

 「退職準備金0円」が44.3%から40.3%に低下。さすがに多少の危機感は全体的に出ているようで、準備している人の平均額も515.6万円から627.6万円に上昇している。

 退職後の楽しみを「特になし」と回答している人が増加しているかと思えば、年収2000万円以上の層は退職後のイメージを「いきいき」と回答した人が前回の2倍増となっており、このあたりは経済力がそのまま将来について気分的に影響を与えているようだ。

 投資を行っているのは全体の約3割にあたる3590人。その他の7割は投資を行っていないことになるが、その理由として4割が「投資するだけのまとまった資金がない」と回答している。こうした現状について、同研究所は「時間分散への理解度が相対的に低い」としている。

 つまり、積立など長期に渡ってコツコツと投資を行うのも有効だということ。フィディリティは老後の生活費が枯渇している人を「老後難民」と呼んでいる。この言葉が流行ったこともあり、最近は老後資金を1億円を貯めるためのサービスに30代・40代の人気が集まっている。

 「月5万円の積立で1億円が貯まる!」という「いつかはゆかし」のCMで有名なアブラハム・プライベートバンクは、投資助言契約額合計746億円(2013年6月末)と急成長している。どういうお客が老後資金1億円を貯めようと「いつかはゆかし」に入会しているのか?アブラハム・プライベートバンク社に聞いた。

 「日本経済新聞で広告を打ったり、テレビ東京の報道番組であるワールドビジネスサテライトの時間帯でのテレビCMを行ったことで、丸の内の大企業勤務のビジネスマンの入会が増えた。商社マン、大手IT企業勤務、銀行マンなどの入会が多い。月10万円の積立をする人が増えている。実はサービス開始当初はマスを対象としていたが実際に入会したのは、エリートビジネスマンばかりだった。この結果をふまえて、春からターゲットを変更した」(同社広報)

 日経新聞を読む人は日本の人口のわずか2%程度に過ぎない。その中で30代・40代ということであれば、人口の1%に過ぎない。「いつかはゆかし」のターゲットが狭いことは意外だった。そもそも大手企業の社員には手厚い退職金や給与があるはず。そんなエリート・サラリーマンの間で、なぜ「いつかはゆかし」が普及しているのか?

 「大手企業のビジネスマンは自分でよく勉強していて、将来にそなえるスキルがある。これからインフレになったり円安傾向になるから、貯金がリスク高いことを良く理解している。だからこそ、今のうちに海外積立投資を実行するほうが有利であることを知っているのだろう」

 ―広告をよく目にするイメージがあるが?

 「いつかはゆかしの顧客の約2割が大学院卒。もともと、アブラハム・プライベートバンクのサービスは、富裕層や知的水準の高い合理的なタイプの人に支持されている。広告の配信については、知的水準の高い人にだけ閲覧されるよう、広告配信場所を工夫している。当社の広告をよく目にするということは、きっとそういう人なのでしょう」

 何も考えずに、退職準備金0円で老後を迎えるか。それとも、老後一億円の資産を有するか。将来の勝ち組・負け組を決めるのは、この夏の行動にかかっている。日本国の債務は、世界最大である。国民に年金を払う余地は非常に乏しい。自分の身は自分で守るしかない。

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