破綻するブラック企業の楽しみ方(9)

片道切符の出向

 会社はリストラに加えて、増資を行なって資本を強化し、増資を引き受けた金融リース会社に50人の社員を出向させた。業績が回復したら戻れるという口約束のみで、出向期間は明示されず、片道切符であることは誰の目にも明らかだった。

 出向先の金融リース会社は株式上場を計画中で、出向ののちに転籍すれば持株会に加入できるという飴玉を用意した。だが、まともに信じる社員など誰ひとりとしていない。やむなく出向に応じたのだったが、50人を受け入れてどんなメリットがあるのだろう。

 おそらく自主退職に追いやる段取りではないか。当然のように、そんな疑問が飛び交い、実際その通りになった。

 出向した元社員は当時をこう振り返る。

 「出向者に割り振られた仕事は、中小企業向けの金融リースで、電話営業をかけて訪問して契約をとってくるというものでした。でも、金利は高いし、金融リース会社なんて要は高利貸しですから、決定的に信用がない。拝み倒すような営業をしないと契約はとれませんが、金貸しの会社ですから出向者にもノルマがあって、1年以内に8割ぐらいは辞めました。私は1年ちょっといて辞めました」

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