「金貸しの系列に入った」との評判が
一方、社内では、減俸と一部の降格だけにとどまって、退任が出なかった役員陣に対して不信と不満が渦巻きはじめた。それは全社朝礼での社長発言が引き金となった。
「今回リストラをせざるえないほどの痛みを経験しました。こういう局面では、社員一人ひとりが自分に矢印を向けて、自分自身の問題として事態を受け止めて、業績の回復にむけて使命感をもって仕事に励んでください」
自分自身の問題とは何事か。そもそも社員をリストラしておいて、なぜ役員は誰も辞めないのか。ブラック企業らしいと言えばそれまでだが、少しは責任をとったらどうなのか。出口の見えない長時間労働がつづくなかで、士気は低下する一方だった。
取引先からは当然のように「おたくの会社、大丈夫なの?」と担当者は探りを入れられる。「リストラと増資で危機は回避したので、あとは業績を回復させるだけです」。取引先から聞かれたら、そう答えるようにと各部署で部長が指示を出した。
しかし、信用失墜は避けられずに「金貸しの系列に入った」という声すら聞かれるようになったのだった。