「新富裕層vs国家 富をめぐる攻防」で再燃の税論争

 フェラーリの集団が爆音を立てて猛スピードでかけていく。

 これは、シンガポールの富裕層たちが趣味で集ったフェラーリの集まりで、マレーシアに朝食にラーメンを食べに行くシーンなのだという。映像の演出上で見栄えのするシーンだ。

 18日放送のNHKスペシャル「”新富裕層” vs.国家 ~富をめぐる攻防~」の冒頭のシーンで、番組の内容が話題を呼んでいる。

年間390億円の税金の取りっぱぐれ


シンガポール
 大まかな内容としては、シンガポールに暮らす日本人新富裕層やアメリカの新富裕層の動きに密着し、世界経済にどのような影響を及ぼすのか、富を再分配し社会の公平性を守る国家とはどうあるべきなのか、探っていく、というものだ。

 例えばシンガポールでは、個人投資家A氏が紹介され、冒頭のフェラーリを運転するのはA氏。大学卒業後、外資系金融会社に就職し、20代で1億円以上の年収を得るまでになったという。9年前に、会社をやめてシンガポール移住。その理由としては「もっと大きなビジネスをしたい」と考えたからだという。

 株式取引は、日本では来年度から利益の2割に税金が課せられるが、シンガポールでは無税。運用の環境で雲泥の差がある。結果から見れば、シンガポールの富裕層誘致の政策に、日本が負けているということでもある。

 船井総研の調査では、シンガポールなど4国だけで年間390億円が失われているという。ただし、実態はそれ以上とも考えられている。

 この金額は、中規模レベルの自治体の年度予算に相当する規模でもあり、国が関心を示すのも無理はない。

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