「新富裕層vs国家 富をめぐる攻防」で再燃の税論争

本当は気持よく払いたい?

 2015年度からは所得税、相続税の最高税率の増税が始まるが、番組の最後には政府の税制調査会の「透明性をさらに確保する」ことで納得をしてもらうということを紹介していたものの、すでにもう報道などで税金の無駄遣いの実態は明らかされており、透明性が説得材料にはなりえないだろう。現状では、答えはないということでもある。

 最初に登場したA氏が「(シンガポールは)成功している人はケタが一つ違う」として、新たなビジネスの挑戦の場として選んだことも明かしている。

 仮にこれがサッカー選手なら、日本のJリーグでなく、やれ欧州挑戦だという論調になる。しかし、ビジネスでの海外進出になると、話が別になってしまう。もちろんサッカー選手も所属チームの国で税金を納めることになるのだが、なぜか文句は言われない。こうした世論の矛盾も現実にはあふれているのだ。

 また、放送では触れられていなかったが、居住理由を「税金」と言わない富裕層も現れている。「子供の教育」として、海外脱出を行う人もいるが、これなどはすでに将来を見据えた子供に日本以外の居住候補を提供していることでもあり、すでに富裕層は今後の何世代にも渡る流れを作っていると解釈できなくもない。

 「金ができると払うのが惜しく感じた経験はある。だから節税するために、逆に変な投資詐欺に引っ掛かったこともある」(40代社長、大阪)という本音を聞いたことがあるが、「(税金は)いくら払ってもいいが、無駄遣いが多すぎる。例えば生活保護の審査がなんで外国人に甘いのか」(同)という厳しい意見もある。

 エイベックス・グループ・ホールディングス創業者の松浦勝人CEOが先日、フェイスブック上に意見を展開し、「僕は日本が大好きだが、日本は僕らを嫌いなようだ」などとしている。

 みな本来は気持ちよく払いたいが…というのが本音だろう。この論争の答えはいっこうに出そうにない。

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