「消えた年金」問題でさらに衝撃の内部告発

 「最後の一人、最後の一円までがんばってやる」。当時の舛添要一・厚生労働相の宣言もウヤムヤとなり、国民が年金行政への不信感を募らせるきっかけとなった2007年に明るみになった「消えた年金記録」問題をみなさんは覚えているだろうか。

 さすがに時間の経過とともに、ほとぼりは完全に冷めていたことだろう。

 しかし、社会保険庁から業務を引き継いでいる日本年金機構の現場では、さらにたいへんなことが起きているというのだ。業務に精通する現役職員の告発が届いている。

 消えた年金とは、加入者が保険料を納付したのに社会保険庁にその記録がないということが明らかになった問題。その金額は総額で5000万件にも上った。原因は、社保庁職員が台帳からコンピュータへの移し替えの作業を適切に行っていなかったことにある。

 その後のことである。

 その模様を、サンデー毎日(9月1日号)が「年金機構・現役職員が決死告発! 年金未払い過払い1000億円の闇」として、職員の内部告発を掲載している。

 同誌によると、記録の不備により受給資格が生じた場合は、5年間の時効に関係なく支給するという法律「年金時効特例法」が成立。機構の現場ではその実務が行われているが、職員A氏はそれに関わっているそうだ。

 実際の現場では、公式マニュアルで対応にあたっているが、職員によって対応がバラバラなのだという。というのも法律には、請求遅れの責任の所在が本人にあるのか行政にあるのかを問うていないからだ。A氏は、こうした解釈の相違による現場のミス?によって、未払いや過払いは1800億円以上になると予測しているのだ。

 多くの人は保険料は強制的におさめられていくことになるが、あまりにも国にすべてを任せておくことの危うさを改めて感じさせる告発でもあった。現行の公的年金制度では、40代より若い世代は「払い損」という明らかに不利な試算も各種調査で出ているが、問題の後始末さえできないようであれば、自分自身が受け取るべき年齢に達した際にも正規の金額を受け取ることができるのかどうか。こうした話が出てくること自体、ひじょうに不安が募ってくるのも仕方がない。

 やはり、何が起きた場合でもリスクヘッジできるように、30、40歳代のエリートビジネスマンを中心に、国に頼らず自力で年金作りをしようとの意識は強い。毎月5万円を積み立てて30年間で1億円を貯める「いつかはゆかし」(投資助言会社アブラハムの積立サポートサービス)を始めるなど、自主防衛の動きが出ており、すでに投資助言契約額合計が746億円(2013年6月末時点)に達したという。

 「消えた年金記録」。後始末の問題はまだ完全に終わったわけではないようだが、この問題は一つの教訓として覚えておいた方が良いかもしれない。

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