日銀による異次元の金融緩和政策によって、インフレ目標に入っている日本。米国の経済政策路線を追随する中で、予測の正確性には定評があるエコノミストの中原圭介氏が、新著「日本人は『経済学』にだまされるな!」の中で、「リフレでは国民は幸せになれない」と警告する。そう、このままではこれから日本人の9割(一般国民)が貧乏になるのだ。
ある大学教授からのメール
「大学で経済学を教えてきましたが、ずっとある種の『釈然としない感じ』を抱いていました。あなたの本を読んで、その違和感の正体が何だったのかようやく合点がいった気がします」
中原氏のもとに、あるメールが届いたのだという。差し出し主は退官したばかりだという大学教授だった。学問としての経済学と、実際の経済がどこまで一致しているかというと、学問どおりに実体経済やお金が動くことはあまりない。経済はビジネスで動くものであり、ビジネスは刻一刻と変化しているからだ。経済学だけが10年も20年も同じ理論を振りかざしても、経済や市場の現実からは乖離していくばかりだ。
「1%(の大金持ち)と99%(のその他)の差がさらに広がるのがインフレ経済。金融商品が上がって富裕層だけ資産が増えても、エネルギーや食料の価格が高騰していきますから、6人に1人はフードスタンプを受給する米国では、貧困層は本当に生活ができなくなります。米国とはこういう社会。本当の意味での景気回復とは国民生活が良くなることです。なぜ、米国型の経済を目指す必要があるのかが、わかりません」
さらに日米を国家の観点から見ると、米国債はほぼ半分が海外投資家、日本は1割未満。つまり米国はドル安・インフレになった方が借金は目減りする上に、基軸通貨であるために、大量にドル紙幣を印刷しても、買い手は存在するのだ。こうしてインフレの恩恵を受け続けるのが米国という国だ。
さて、多くの日本人にとって実際のメリットは少なさそうだが、このままインフレ政策を押し進めるとどうなるのか。