10月から、公的年金の受給額が段階的に引き下げられる。また、2015年度までには物価スライド分の特例水準も解消されるなど厳しさを増しており、年金危機はこれまでも叫ばれてはきたが、受給者にとっての「改悪」はついに始まった。現役世代にとっても、かなり身近な問題として意識せざるを得ない状況になっていることは確かだ。
厚生労働省は2009年に、2031年に厚生年金の積立金が不足することを財政検証レポートで試算し、すでにサジを投げている。「100年安心」の名のもとに健全性をアピールしたものの、それは、運用益4.1%、名目賃金上昇率2.5%、物価上昇率1.0%を続けていくという前提に立ったもの。そもそも、運用益が4.1%を超えていない年がほとんどで、早くからこの点も指摘され続けてきた。
そして、減額がいよいよ始まるということで、今週発売された、週刊ダイヤモンド、週刊現代、週刊ポストがこぞって特集するなど大きな関心事であることがわかる。各誌とも将来にわたっていくら支給されるかを試算している。その中で、週刊現代に年収1000万円(妻は専業主婦)のケースがあるので、見てみることにする。
選択肢として65歳からの受給開始を選び、妻の基礎年金と合わせると月額25万4000円を受け取ることができる。最低限度の生活はできる金額だが、年収1000万円は普段の生活で油断をしがちでもあり、貯蓄がない場合や資産運用に失敗するケースもままある。
また、年収1000万円以上の層は、大企業勤務の人が多いのも特徴であるが、あまり企業年金をアテにしすぎない方が良い。
というのも、月額40万円以上支給されていたが、途中で大幅に減額された企業の例があるからだ。それは日本航空(JAL)と東京電力。国が入ったから会社は存続できたが、受給者も大幅減額になくなく賛成せざるを得ない状況に追い込まれてしまった。
さらに、「社会保障制度改革国民会議」(議長・清家篤慶應義塾長)では支給開始時期を68歳への引き上げ案を検討するなど、今後はますます条件は悪くなる一方だ。
やはり、何が起きた場合でもリスクヘッジできるように、30、40歳代のエリートビジネスマンを中心に「自分年金」を作ろうとする動きは大きな流れとなっている。毎月5万円を積み立てて30年間で1億円を貯める「いつかはゆかし」(投資助言会社アブラハムの積立サポートサービス)は、すでに投資助言契約額合計が746億円(2013年6月末時点)に達したという。
もう、若い人ほど損をするという流れを食い止めることは不可能と、国もやりくりを始めた今、できることは自分でしなければならない時代となった。国に面倒を見てもらう時代は完全に終わりを告げた、ということだ。