日本には世界有数のファンドが存在する。それは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で、運用資産総額は121兆116億円に達する。世界の公的年金と比べての規模は段違いで、大きな影響力を持つ米国のカルパース(CalPERS、カリフォルニア州職員退職年金基金)でさえ26兆円で、その大きさがわかる。だが、リターンは心許なく、2001年度からの実質運用利回りは2.04%と低利で、しかも基金の取り崩しはすでに始まっており、おまけに、厚生労働省からは2031年に基金が底をつくと宣告されている中で、日々の運用が行われているという危うい基盤の上にわれわれは立たされている。
GPIFは公的年金の原資となる基金を運用しており、2001年度からの実質運用利回りは、12年間で2.04%(名目1.54%)となっている。そして各年度の運用益は次のとおりとなっている(平成24年度 業務概況書より)。
2012年度 9.98%
2011年度 2.51%
2010年度 -0.95%
2009年度 12.44%
2008年度 -7.37%
2007年度 -4.63%
2006年度 3.51%
2005年度 9.76%
2004年度 3.11%
2003年度 7.90%
2002年度 -5.61%
2001年度 -3.75%
ちなみに2013年度は前年度以上となる見通しだが、ただし、すでに取り崩しが行われており、運用資金は流出が始まっている点は見逃すわけにはいかない。2009年度に4兆円を取り崩したことに始まり、それ以降10年度6兆円、11年度6.4兆円、12年度8.9兆円と資金流出が続いている。
2012年度こそ成績が良く、11兆2222億円の運用収益となったが、過去12年のうち5年はマイナスだった。プラスの年にしても取り崩し金以上の運用収益額を必ずしもあげているわけではない。以下は、年度ごとの収益金だ。2012年度のペースで毎年運用することができるなら良いが、実態はそこまでうまくいかないのが現状だ。
2012年度 11兆2222億円
2011年度 2兆6092億円
2010年度 -2999億円
2009年度 9兆1850億円
2008年度 -9兆3481億円
2007年度 -5兆5178億円
2006年度 3兆9619億円
2005年度 8兆9619億円
2004年度 2兆6127億円
2003年度 4兆8916億円
2002年度 -2兆4520億円
2001年度 -5874億円
ちなみに前出したカルパースだが、実はカルパース対GPIFという運用成績比較シュミレーションを楽天証券が行っているのだ。お互いのポートフォリオをETFを使って再現し、2009年7月~2011年6月までの2年間の成績を比較するというものだ。
GPIFはすでに中期計画の変更案で、国内債券の保有比率を67%から60%に低下させている。その代わりに外国債券を8%から11%へ、外国株式を9%から12%へとそれぞれ増加させ、海外を含めてよりリスク性資産を持つことで、リターンを上げていこうとしている。われわれ国民からすれば、より高いリターンを出してもらうことは何より結構なことだ。
だが、やはり2031年に積立金の枯渇という予測は、現在、40歳台以降の現役世代にとっては、大きく立ちはだかる難題だ。