ヘルスケア事業を売るパナソニック、キャッシュが必要な裏事情

 パナソニックのヘルスケア事業が、米投資会社KKRに売却されることが正式に決まった。パナソニックヘルスケア社の全株を来年3月末、KKRがつくる特別目的会社(SPC)に1650億円で売却し、このSPC株の20%をパナが引き受ける。これにより、パナは750億円もの売却益を計上する。「将来性有望な医療関係事業を、なぜパナが売り急いだのだろう」(電機業界他社)という声も聞こえる。パナには、今期末までに“まとまったキャッシュ”が必要な事情があったとみられている。その事情とは―。

高く売れる助言どおりに売却


パナソニックヘルスケア公式サイトより
 来春スタートする新ヘルスケア社は、パナブランドを使用し、KKRのノウハウを使って世界展開を目指す。パナにとっては、来期から子会社ではなく持分法適用会社となり、ヘルスケア社の利益の20%だけが連結決算に加算される。KKRがつくるSPCに対しては、日本政府が出資する投資ファンド、産業革新機構が一部の資金を出す可能性も残っている。

 ヘルスケア社は、血糖値センサー、電子カルテシステム、バイオメディカ機器の3事業を柱とする会社で、2013年3月期の売上高は1343億円、営業利益は87億円、従業員は約3000人。香川・高松を拠点とした旧松下寿電子工業を母体とし、三洋電機の健康関連事業も統合されている。

 売却先の検討は今春に本格スタート。5月の一次入札に応募したのがおよそ10社だったので、先行きが有望とみられている事業であることがわかる。8月下旬の二次入札で、KKRのほかに東芝などの3グループが応札し、その中で、最も好条件を提示したKKRが優先交渉権を握り、1カ月で最終決着した。

 ヘルスケア社の傘下事業すべてが今回の売却に含まれたわけではない。たとえば、超音波診断機器事業は来年1月にコニカミノルタへ、補聴器事業は同3月末にパナソニックシステムネットワークスに移ることが先に決まっていた。「アドバイザーが総じて高く売れる方法を助言した結果に従った」(関係者)とみられている。

 「収益性の高い事業をなぜパナは売るのか」(電機他社)という疑問は当然のことだが、証券関係者はこう分析する。

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