大富豪共通の難題「後継者育成」ユニクロ柳井正氏

 ユニクロを展開するファーストリテイリングの2013年8月通期の売上高が1兆円を突破し、日本のアパレル業界で初の1兆円企業となった。ユニクロ帝国を築き上げたのは柳井正氏(64)。「公約」の65歳引退を撤回したが、その背景の一つには世界中の大富豪に共通する難題「後継者育成」が残る。

必然性のないところには人は集まらない

 ファーストリテイリングは、2013年8月通期の売上高は前年比23.1%増の1兆1430億円となった。3人兄弟で唯一の男だったこともあり、家業を1984年に継いでから約30年、ついに業界初の1兆円企業の称号を得るまでになった。もちろん、評価する声は多く聞こえてくるが、それは富裕層だったり、アッパー層であったりすることも大きな特徴だ。

 柳井氏の著書「一勝九敗」の中に、「必然性のないところには、人は集まらない。こういう人に来てもらいたいと心底思っていたら、それは必ず伝わるものだ」という一節がある。

 人はたくさん集まっているが、離職率は高い。13年8月期決算で売上高1兆円を達成したが、新たに売上5兆円を目標に掲げたことで、以前から公言していた「65歳定年」という公約は一旦引っ込めることになった。これが思うように人材が集まっていない証明でもある。

 アパレル業界関係者によると、やはり柳井氏は常に気にしているのか、これまでの自身の付き合いや交友のある経営者から話したことや教えを自らテキストにまとめて、集められた幹部候補生たちに経営の道を教えているのだという。今後、どの程度の効果を生むのか、いずれにせよ時間が掛ることだろう。

 また、身うちに継がせないことも以前は公言したが、現在では長男の一海氏を執行役員として登用しているが、今後はまだわからない。すぐに後継者とは言えないが「何代か後にということであれば、社長就任もあり得るのでは」と業界関係者。帝国の継承まで今後も目を光らせることになるだろうか。

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