無暗に敵を作らないことも大切?
メディアでは取り上げられることがなかった、ユニクロの内部を取り上げたノンフィクションルポ「ユニクロ帝国の光と影」(文芸春秋)では、文芸春秋を相手取って東京地裁に提訴したが、主張は退けられている。
これは著者が、中国の複数の工場に突撃取材行い、その労働の過酷さやユニクロ側の要求の高さなどの証言を得るなど、これまでの日本のメディアでは知ることができなかったような内容が盛りだくさんだ。国内の従業員の働き方にも言及しており、タイムカードを通してから再び職場に戻って働いたり、本社もこうしたことを黙認しているなどという記述があり、見過ごすことはできなかったようだ。
ちなみに、この著書「ユニクロ―」は実は、富裕層の間でも読んでいる人は多く、法的な会社はともかく、ノンフィクション作品としてたいへんな力作でもあることは付け加えておく。
センセーショナルなフレーズ、自分への不利な言論への対抗。保有株を一部、オランダ子会社に移転したこともインターネット上では言われなき批判が多かった。こうした要素が、ある種の炎上を生み出す要因になっているようだが、広い層から受け入れられるようになるかどうかも、後継者が活躍しやすい土壌作りになるのではないか。
いずれにせよ、大富豪の後継者育成はどこでも大きな課題である。
柳井氏の後継問題について、同じアパレル業界に身を置き、ユニクロとも関係がある富裕層に取材を依頼したところ、「商売に影響があるかもしれないので今回は、許してほしい」との断りの回答が来た。これは、いかに、柳井氏の存在が大きいかを示すものでもあるのではないか。今後、さらに大きくなるほど、後継問題は難しくなっていくことだろう。良い後継者を育成した時こそ、すべての層に受け入れられる大富豪となるのか。