第12回(最終回)社員を犠牲にした繁栄はどこまで続くのか?
本連載はいくつかの破綻事例を取材して、まとめたものである。経営破綻にいたる企業の多くは、どこかブラック体質に蝕まれていた。労務環境が不健全で、改善される見通しがなければ、社員は人生をこの職場に賭けてみようと腰をすえたくとも、すえられない。そんな企業の年間離職率は10%をゆうに上回り、社内の空気がギスギスと荒れ果ててしまう。(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)
キャリア設計ができない職場から人は去る
ブラック企業大賞HPより
しょせん社員は、経営者が潤うための道具にすぎないのか。経営者の本心は社員に見透かされてしまうのだが、それでも弱肉強食、優勝劣敗を当然視する姿勢に修正の余地などない。このタイプの経営者は仕入先に対しても「出入りさせてやっている」「使ってあげている」と上から目線で、優越的地位の乱用に快楽を覚えている。
これは経営観に由来するのでなく、たんなる性癖の問題だ。しかし、社員と仕入先の犠牲の上に成りたつ経営がどこまで続くのだろうか。悪運の強い経営者がふてぶてしく社業を保ち続けているのは事実だが、代替わりをすれば大方、社業は転落を余儀なくされる。まさしく因果応報である。