イオンリート新規上場、大家と店子が同じCS型の懸念

 イオンがスポンサーのREIT(不動産投資信託)のイオンリート投資法人が22日、東証に新規株式上場を果たした。公募価格10万5000円に対して、約10%上回る11万5000円の初値 を付け、11万3600円で引けた。国内リート市場では初の小売業の上場。しかし、イオン特有の他のリート法人にはない懸念も存在する。

 「リートはスポンサーのごみ箱」。これはスポンサーが不要な物件を、リートに高めの値段で売りつけるという意味を指しており、業界では古くから揶揄されてきた。決して、透明性が高いとは言い切れず、業界関係者は「一番高値で買ってくれるのはリート」と言われるほどだ。

 もちろん、すべてはそうとは言い切れず、最近ではランドマークになるような優良物件も出てきたり、かつての言い伝えは必ずしも当てはまるものではない。

 イオンの場合では、スポンサーであるイオンが店子となり、不動産投資法人が大家という関係になる。これでは、店子の力が強く、賃料交渉では優位に立つことは想像に難くない。

 さらに、イオンが物件から撤退を決めた場合は、ショッピングセンターだけに新たな入居者を探すことはひじょうに困難である。別のスーパーを探すか、売却先を探すしかないだろう。
維持していくにしても、住居系リートよりも、改装、保険などの経費も多くかかってくる。

 リートとしての新規上場にしても、イオンにとってメリットが大きい。イオンは、たび重なる買収によって自己資本比率が18.0%まで低下しており、新たな資金調達は課題となっていた。社債の発行や公募増資を行う手法が一般的だが、あえてリートを選んだのは、イオン株の希薄化が起こらないためだ。イオンの持つ合計17物件を約1600億円を不動産投資法人に売却することで、新たな資金を得ることもできた。

 個人投資家に人気が高い星野リゾートなどでも、同じような懸念点はある。ただし、こちらはブランド力も高く、株主優待もあり、ファン=投資家のような関係性が構築されており、大きな声はあがっていない。

 東証リート指数は1447.51(22日終値)となるなど、好調な不動産市況を背景にリートも近年では一番のにぎわいを見せており、今年に入ってから新規上場はこれで6件目となるが、投資家も見極めが大切となる。

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