競輪の最上位S級の所属選手18人が一般社団法人「日本競輪選手会」を脱会することを発表したが、平均年収1000万円以上の競輪界の揉め事の原因の一つに、年金の問題もあるという。
それどころか、将来に向けて消える職業の一つにさえなりかねない現状も有りうる。
18人の中には五輪のメダリスト、長塚智広選手ら著名選手も含まれており、大きな衝撃を与えた。選手たちは、一般財団法人「SS11」に移るという。
そもそも競輪は、登録人数は全国で2700人程度。1億円プレーヤーから新人までいるが、全選手平均年収は1117万円と恵まれた給与・賞金体系となっている。経済産業省の調査によると、次のようになる。
全選手平均 1117万円
S級 1841万円
うちS班 9236万円
うち1班 2298万円
うち2班 1386万円
A級 879万円
うち1班 1026万円
うち2班 863万円
うち3班 740万円
最上位S級のトップクラスの平均は1億円弱。また、40歳、50歳を超えて現役を続ける選手も多く、選手寿命も長いのが特徴でもある。
最もグレードの低いクラスのレースでも、着位賞金6万7000円~3万5000円が支払われるほか、出場手当が1日あたり2万8000円、日当3500円が支払われる。このほかにも、出場手当、ナイター手当、雨天手当、年末年始手当もある。
また、医療給付や退職給付、年金給付も行われているが、ここ数年間は選手の掛け金だけで賄い切れていないという。そのため、競輪事業振興を行う公益財団法人「JKA」や競輪施行者が助成しているのが現状だという。
スポーツ各紙には、年金は2010年から支給が停止されている、とも伝えられており、もう制度上はすでに破たんしているとも言えなくはない。
それというのも、公営ギャンブルは総じて売上減少が続いているが、中でも競輪はその傾向が著しい。経産省製造産業局の将来推計によると、売上高は、平成16年には9151億円だったが年々減少しており、平成30年には、ついに4407億円と半減している。また、楽観的なシナリオ推計でも、4926億円であり、ほとんど変わりがない。さらに、人気回復の起爆剤となるような要素はいまだない。
競輪、競輪外の収入ともに黒字の自治体は函館、前橋、松戸、川崎、平塚、小田原など少ない。今後は活動の場の減少や、手当類の減額など、より厳しい情勢も考えられる。
競輪選手は、消えゆく年収1000万円職業となるのか。