懲役1年も、富裕層要注意の「海外資産5000万円」の申告

 今年12月31日時点で所有する5000万円以上の国外財産に対して、国税庁に申告義務が課されている。来年3月17日までに、国外財産調書を作成して提出する義務があるのだが、資産の所有者は注意が必要となる。と同時に、脱税の意図はなかったとしても、心情的に新たな資産取得をする際に躊躇するという声も上がる。


 制度は今年12月31日時点で海外資産5000万円以上を保有する人に対して、申告義務が課されるというもの。今年分の申告から新たに制度・施行化されたもので、毎年年末の時点の資産を国税庁に「国外財産調書」として、提出することが義務づけられた。

 平成24事務年度で、海外資産の申告漏れの非違件数は113件で、前年から2件増加した。申告漏れ金額は218億円だった。1件あたりでは、4051万円となる。資産の種別としては現金の割合が最も高くなっている。

 国税庁はここ数年は海外資産の把握に力を入れてきたこともあり、違反件数はかなり減少している傾向にある。

 申告にあたっては、罰則も明確化されている。故意に国外財産調書を提出しない場合や、虚偽の記載をした場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される。

 ただ、記載内容が正しいのかどうかを正確に判断できるのかどうか、という声もあがっていることは確かだ。

 例えば、国税庁によると、外国法人の株式のストックオプションを保有する場合が記載されているが、「金融商品取引所等に上場されていない株式の場合には、適正と認められる売買実例価額などによって価額を算定します」とある。

「適正と認められる」などゆるい表現をするしかない。また、土地、建物、美術品などについても価格の算出根拠には「合理的な方法」などの表現が並ぶ。他にもリゾート会員権、特許権など様々な想定がなされているが、時価の算定においては、現場では混乱が生じても不思議ではないだろう。

 さらに、抑止力効果もあると見る向きもある。

 大阪市の40代アパレル社長A氏は、5000万円以上の海外資産の申告が義務付けられるために「海外コンドミニアムの取得を踏みとどまった」という。もちろん「脱税する意図はさらさらないが、覗かれているような気分になるのはちょっと…。それに手続きが増えるのも面倒」と話す。

 海外資産の把握という意味に加えて、国外流出の阻止という意図も含まれているのかもしれない。この制度が、ある種の抑止力として、今後新たに海外資産を取得しようとする、30代などの若い富裕層たちにはネックになる可能性はある。

 いずれにせよ、現時点で5000万円以上の海外資産をお持ちの方は、お忘れなく。

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