無料で本当に良かったのか「東大無料塾」が3月閉校へ

 一般社団法人「東大無料塾」は5日、閉校(3月20日)を発表した。同時に2月5日以降の新規の入塾生受付も中止した。現役東大生が中心となった、受験の枠にとどまらない学ぶ機会を生徒に無償で提供するという新しいプロジェクト。理由は金銭コストに耐えられず、昨年10月の設立からわずか半年で閉校することになった。

 東大無料塾はHP上で「我々の使命は、”知の継承”という文化を取り戻すことです」と謳い、従来の学習塾の枠にはとらわれない受験勉強の先にある学問に対する好奇心を育てていくことが目的だという。

 そうした理念を持って、運営者、講師陣もほぼすべて現役東大生というグループで昨年10月に、東大駒場キャンパスのすぐ近くに教室を構えて設立された。現在では100人以上の生徒と関わりを持ったという。

 コンセプト自体は新しいのだが、その名にもあるとおり、受講料は無料。運営費用としては、支援者、協賛金を広く一般からも募っていたが、ただやはりここがネックとなった。

 東大無料塾は「運営終了の理由をお伝えします。半年間、本当に多方面の多くの方々からご支援をいただき、私たちの活動の社会的存在意義を信じ、踏ん張って運営を続けてまいりましたが、生み出す社会的価値に対して、かけるコストが大きすぎるということで、これ以上の運営継続は難しいと判断しました。このコストとは、人的コストと金銭的コストの2つのコストです。完全に大学生のボランティアで運営しておりますが、本業の勉強や他の活動で多忙な大学生に継続的に関わってもらうほど事業としての魅力を出せず、また、不動産の維持などにかかる金銭的コストが寄附収入で常に賄えるほどでなく高額すぎることも致命的でございました」と説明している。

 ただ「市民社会において、自らの学びを自らデザインすることは世代・地域・個性を超えて求められることのひとつです。そのための時間を最も有する大学生が自発的に行動し、支援する大人・受益する高校生といった世代をつなぐ社会の結節点となっていくモデルは、無料塾に限らず、学びを通して社会的な価値を生み出す普遍的な活動のモデルであろうことは今でも確信しております」と意義を説く。

 学習塾は一般的には、初期投資は不動産の契約と賃料がかかり、運営費用として賃料の6カ月分~1年分は費用を持っていなければ厳しいとも言われる。

 東大無料塾のサイトによると、協賛者は法人で2社、個人で7人の名前が挙がっている。なかなか支援の輪が広がる前に資金に行き詰ったようだ。

 

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