大手学習塾のリソー教育は売上の水増しについて、第三者委員会(委員長=髙野利雄・元名古屋高検検事長)が調査結果を発表し、グループで数年にわたって、合計金額は83億円以上に上ることがわかった。縮んでいく受験市場においても、厳しいノルマ必達が課されていたことが背景にあると調査委は見ており、未達ならば、降給・降格はもちろん、ペナルティ教育が課されたり3カ月ごとの人事異動が行われたりしていたが、今後の在り方についても指導した。
調査委によると利益操作のやり方は次のようになる。
通常授業(月賦方式で支払い)において、不適切処理が行われていた。月1回でも従業が行われれば、月謝が発生する。通常授業と講習会が混在しており、未消化のコマが発生する余地がある。「当日欠席」「社員従業」「ご祝儀」の仮装や、講習会契約を表向きには他の契約として処理したりしていた。
調査委は「問題は売上の数字目標に達しないときに、これらの方法を仮装して未消化コマ数を減少させて売上を過大計上する不適正計上を許す土壌となっていた」としている。
サービス授業を有料授業と同様に扱い、有料授業を実施したものとして売上が計上される仕組みになっていた。また、売上計算の基礎となる授業料単価で、契約内容に基づくものではなく、講師のランクに応じて設定されたものとなっていた。
売上計上システムのもう一つの機能不備は、授業料を値引きして契約した場合に、契約額ではなく値引き前の金額によって売上が計上されていた。
リソー教育は平成21年から、名門会は18年ごろから、伸芽会は24年からこうしたことが行われていたようだ。
責任関係だが、A会長が関与を否定しており、調査委に対して、C専務は「自己保身もあり、A会長に事実を述べることができなかった」と涙ながらに訴えたという。
リソー教育グループは,毎年20%成長を目標に掲げており、目標の達成・未達成には人事評価制度で、信賞必罰で対応してきた。目標を達成すれば部下も含めて人事で評価され、高額な賞品を受け取るなどした。しかし、逆に達成できなければ部下も含めて降給・降格などの低い評価が下され、ペナルティ教育が行われていた実態も明らかにされた。
市場環境は厳しさをす中で、現場への圧力は相当なものがあっただろう。
森上教育研究所の資料によると、関東の1都3県の私立中学受験比率は20141年は12.0%(速報値)で、6年連続でダウンしている。また、業界では、そうした本格的な少子化を前にして、昨今、M&A合戦が盛んだ。
代々木ゼミナールがSAPIXを買収したり、栄光と増進会が進学会との資本の主導権争いをしたり、これ以外にも様々な資本関係が発生しており、戦国時代の様相だ。
また、事情通によると、実際に、大手に対しては銀行から学習塾の買収案件を持ちこまれることもあるそうだ。今後も業界再編は続くと見られる。また、明光ネットワークが昨年から、3000円のクオカード進呈という株主優待を開始し株価が上がったが、「株価対策」とも言われるほどだ。
◆上場学習塾の売上高ランキング
1 明光ネットワークジャパン 486億円
2 栄光ホールディングス 341億円
3 ナガセ 295億円
4 拓人 253億円
5 リソー教育 217億円
6 学研ホールディングス 209億円
7 市進ホールディングス 191億円
※明光HPより
こうした環境の中、リソー教育は昨年6月、JR新宿駅南口徒歩2分の好立地の空きビルを35億円で取得した。本社機能集中と、グループの旗艦校舎とする予定だった。さらには、時期を同じくして、ドイツ銀行を主幹事として公募増資を行い、54億円を調達していた。
調査委は「売上に過度にこだわることなく実情に合った事業計画を立案し,上記の三原則を地道に実施していくように努めるべき」だとした。また、「退会生に対して返還義務のある授業料に関しては、今後、誠実にその履行をすべき」ともしている。