富裕層が欲しがるものの一つに外国の市民権があるが、英国当局の移民政策の諮問委員会から25日、世界初の「オークション」形式のビザ取得誕生の可能性に言及した提案が出されたことがわかった。
現状は100万ポンド(約1億7000万円)の投資から取得が可能となっているが、最低でも250万ポンド(約4億2600万円)以上の金額を積み、上限金額は制限がないため、事実上の青天井になっている。人数制限はあるために、本当に欲しければ10億円を超える値段がつく可能性さえもある。
100~1000万ポンドまで現在は滞在プランがあるのだが、年間の半分以上は英国に滞在義務が課せられることになる。しかし、オークションプランは、わずか90日の滞在と短くて済む。そして、資格の有効期限は2年と短くなっているところがミソで、「更新料」かのように、さらに継続的に投資をさせようという狙いも見えてくる。
下図は上の三つが従来のプラン。下の二つが改正プラン。
資格期限 滞在義務
100万ポンド 5年間 185日
500万ポンド 3年間 185日
1000万ポンド 2年間 185日
200万ポント 5年間 185日
プレミアルート 2年間 90日
(最低250万ポンド)
端的に言うと、もっと投資金額を増やしてくださいという意味、さらには、英国は海外の富裕層から人気が高いこともあり、強気の政策を諮問してきたということだ。
ちなみに、居住権獲得者の国別で見た内訳は次のようになる。
合計1647人(2008年第3四半期~13年第3四半期)
ロシア 433
中国 419
米国 96
エジプト 46
インド 44
カザフスタン41
イラン 38
パキスタン38
オーストラリア36
カナダ 36
その他 420
居住権を得た富裕層は英国内で、年間で139万ポンド以上の消費を平均的に行っているという。教育費には年間6万ポンド以上。さらに、一時消費として自宅200万ポンド、車6万ポンドを使うという。
新案では、英語の試験はなく、単なる「ビザのイーベイ化」「金もうけ」などの批判が大きい。フィナンシャルタイムズ、インディペンデント、ガーディアン、BBCなど主要メディアも批判の論調となっている。
諮問委員会は「富裕層の獲得のために各国間で競争が起き、より経済発展につながる可能性がある」としている。
オーストラリアでは、500万豪ドルを投資すれば良い、通称SIVビザを施行。申し込みの9割以上が中国人富裕層となっている。また、カナダでは、中国人富裕層の増加もあってプログラムが強制終了されてもいる。
富裕層の奪い合い、さらには増加による規制など各国ともに思惑がある中で、英国はオークションによる居住権認可に踏み切るのかどうか、世界が注目する。