「読書」より「貯金」、学生の4割が本を読まない事情

 大学生の4割が全く本を読まないことが全国大学生活協同組合連合会の生活実態調査で判明した。ここでは、本を読まないことが良いのか悪いのかという点についてはどちらの立場も取らないが、その背景を見てみる。

 この調査は、同連合会が昨年、全国30の国公私立大学で実施し、大学生8930人(国公立5618人、私立3312人)の回答があった。また、1日の読書時間(電子書籍含む)をは平均26.9分で、全く本を読まない「0分」は40.5%。2004年以降で読書時間の調査では最も短く、ゼロは初めて4割超えになった。

 ◆学生のレベルによって差があるのかどうか

 東京大学の学内広報の学生の読書調査を見てみる。

 2001年の東大の学内広報の調査によると、毎月の本代は1万2800円となっている。教養書は減少しており、勉学書は増加しているのだ。

 東大文1の男子学生の「学費は半額免除になっていますが、それでも年間26万円+教科書代の負担は重すぎます。学費は仕方ないにしても、教科書は高価すぎて、4000円もする本を何冊も買うことはできず、興味のある講義も諦めざるを得ないのがつらいです。しかも、東大出版の本は、高い、つまらない、分かりにくいと悪評高い割に、教科書に指定され、買わされることになるのが納得できません」という声が紹介されている。

 授業などの勉学書の費用負担は増えており、その上に他の教養のために本を買うということに負担を感じている様子だ。ちなみに、東大内の図書館に不満だとの声もある。

 ◆食費削る中で本代も
 独立行政法人「日本学生支援機構」による隔年調査(2012年)で、学生の年間平均生活費は70万4600円だということがわかっている。10年度より6.7%増えているのだが、食費を2.5%、光熱費を7.5%それぞれ削っていた。

 さらに、奨学金を受け取る学生の割合は52.5%と過去最高だった。就職活動などで欠かせないスマートフォンなど通信費も増えていた。

 ◆貯蓄
 最初の全国大学生活協同組合連合会の生活実態調査に戻るが、将来を心配して貯蓄をしているのだ。貯金・繰越は大幅に増えている。

自宅生1万7400円(1290円増)
下宿生1万2140円(1430円増)

 また、貯蓄の目的として「将来への備え」が29.5%と最も多い。支出に占める割合は10.3%となり、79年以降初めて1割を超えた。

 ちなみに書籍代は自宅生1740円、下宿生1820円。文庫本2冊程度の金額だが、すぐには結果の出ない本よりも金が大事というのはわからないでもない。

 ◆30代年収3000万円の人は読まないのか 
 ゆかしメディアは連載30代で年収3000万円を実現する(10)の中で、30代で年収3000万円を実現した人と普通のビジネスマンの間には、平均して読書量で38倍の差が出ていることを取り上げた。

 これは、30代年収3000万円の人は、月に10冊以上読む人が39.3%、一方で読まない人16%というデータを紹介した。ここから見ると、必ずしも読む必要はないだろう。

 ただ、まったく読まない人にしても、人と会ったり研修に参加したり、違う形での自己投資を行っているという。何らかの形でのインプットはしている。

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