株式譲渡益の課税が2014年1月から10%から20%に戻ったことで、昨年2013年は上場企業の大株主らによる駆け込み的な譲渡が行われたが、100億円以上の株式売却を行っていた大株主が15人いたことがわかった。
このたびの参院予算委員会で大門実紀史委員(日本共産党)が明らかにした。これは100億円以上に限った場合だが、15人で合わせて譲渡総額は4769億円、節税総額は429億円。1人あたりに換算すると、29億円になる。
もちろん、100億円未満ということであれば、数多くの企業の創業者や大株主たちが何らかの形で行っている。
◆100億円以上の株式譲渡を行った上場企業幹部
氏名 会社名 売却額 節税額
孫正義 ソフトバンク 2313億円 231億円
似鳥昭雄 ニトリHD 453億円 39億円
三木谷浩史 楽天 296億円 28億円
重田康光 光通信 188億円 14億円
里見治 セガサミー 178億円 18億円
左右田稔 東建コーポ 152億円 13億円
馬場功淳 コロプラ 150億円 15億円
三木正浩 ABCマート 144億円 3億円
三木氏の妻 同上 144億円 14億円
片山直之 サンマルク 140億円 14億円
井植由佳子 小林製薬 139億円 6億円
野村正治 ドウシシャ 137億円 9億円
中村雅哉 バンダイナムコ119億円 6億円
安田隆夫 ドン・キホーテ109億円 8億円
橋本俊明 メッセージ 108億円 11億円
※大門委員の質問、「しんぶん赤旗」、有価証券報告書から作成
保有株式に掛る税金は、本人名義の株式を3%以上保有している場合は総合課税となり税率が地方税と合わせると40%以上となる。しかし、節税した上で実質的に他人名義にしないようにするため、資産管理会社を利用して保有株式を移転して、分離課税にしようとするスキームだ。
大門委員は「手口が姑息で、明らかに課税逃れだと思う。ここに挙げたほとんどがやっている手法です。自分の会社に売った形にして、保有率が3%を超えると総合課税になるので、3%を超える分を資産管理会社の名義にする。上場企業でも何でもないので、資料は公開されない、実態は公開されない。本当に合法的なのか問われるべき。富裕層は税金を払わないという方向にいっている。全体として、資産家優遇を続けていいのか」とした。
安倍晋三首相は「所得税の最高税率の引き上げを行っている。高所得者に一定の負担を求めている。ご理解をいただきたい」とした。また、麻生太郎財務相兼副総理も「資産管理会社の実態把握に努めていきたい」とした。
譲渡益の優遇税制10%から20%に戻るために、2013年の個人投資家の売り越し額は1.9兆円以上になったという。制度の替わり目には、大金が動くのだが、今回のその現象にすぎない。