これが「女子力」というには語弊があるか。
理研のユニットリーダー小保方晴子さんの研究班が発表したSTAP細胞に複数の疑義が生じているが、研究の世界でのし上がる処世術を駆使していて地位を築いたのか、とも疑いの目を向けたくなる。
週刊文春(3月27日号)には「小保方晴子さん乱倫な研究室」と題して、ハーバード大バカンティ教授、さらにはかつての上司だった若山照彦山梨大教授、理研副センター長の笹井芳樹氏らにすり寄ったエピソードが紹介されている。詳細は同誌にあるが、某教授には、すり寄って誤解を招き、教授の夫婦仲や、組織の仲がギクシャクしたこともあったそうだ。
ある全国紙の遊軍デスクは「ピンクでムーミンの絵がある研究室で、若いカワイイ女性が割烹着を着て研究する。本来は研究を客観的に見るという目を持っているつもりでも、いわゆる色仕掛けによる目くらましを食らったんだろうな」という。
ノーベル物理学賞の湯川秀樹博士らの出身母体でもあり、現役の同化学賞受賞者の野依良治博士が理事長を務める理研。研究員たちも精鋭ぞろいの理研の公式発表に最初から疑いの目を向けろというのは酷かもしれないが、周到に準備されたガーリーさを強調する広報戦略は、正常な思考がぶっ飛んでしまうには十分なものだった。
その日のうちに紙面づくりを行う新聞では、その日の発表はその日のうちに報道を完結させるため、事件を粘り強く裏どりしていくような広範な取材までは時間的な制約がある。一面では研究成果について、詳細にまとめても、どうしても若いカワイイ女性のビジュアルに目が行ってしまうのは仕方がないところだ。
ただ、ある種の疑問もあった。30歳の若さでネイチャーに掲載される研究論文を発表するということはひじょうに稀有なことだからだ。
「研究の世界でも、今はこんな若い女性が活躍する世界になったのか、と感心もしたし、本当かとも疑問も持った。でも理研がウソを発表するはずもないしな、と考え直したり・・・」(前出デスク)。
マスコミは常に新しいスターを求めている。しかも今回はそれが、若い女性だったということで、なおさら加熱報道となったことは間違いない。
しかし、仮に大々的な広報をせずに、ホームページ上に発表するだけの通常の広報だけだったならば、疑惑にさえなっていなかった可能性もある。ちなにも科学誌ネイチャージャパンの主要取引先の一つに「RIKEN」とある。これは理研のことだが、掲載した背景にはこんなことまでも疑ってしまうことになる。
もちろん最大の関心事は、STAP細胞自体の存在。理研は検証に時間がかかることなどを理由に逃げたが、当事者の小保方さんと「ゼネラルプロデューサー」と見られる笹井氏が出て説明しなければ、真相はわからない。