年利36%「株主優待」に成り下がった「ふるさと納税」

あの原発立地自治体は年利36%

 先に紹介した専門サイトだが、これは、特産品をプレゼントしている自治体は5割に上っている(総務省調べ)ことが主要因だ。

 例えば、今人気が高いといわれているのは佐賀県玄海町で、「金のプレミアム」というプランがあり、100万円の寄付で、ふぐ、和牛などのギフト3万円分が毎月届くというもの。単純に利回りは、3万円×12カ月で、驚異的な36%以上ということになる。この町は全国的に発信される情報としては、九州電力玄海原発の立地自治体として有名だ。こうした奮発したPR戦術も自治体にとっては、ふるさと納税が良いきっかけになっている。

 総務省の調査に対して、「自治体のPR、地域経済への波及効果が期待できる」と答えた自治体は123。「寄付の促進が期待できる」と答えたのは41だった。自治体間によりPR合戦となるのは、むしろ自然の成り行きか。

 では、こんなにプレゼントして赤字になるのではないか、との懸念が沸いてくるが、狙いは納税・寄付とは別のところにある。

 中国地方のある市役所担当者は「今は、PR、観光事業促進、そういった目的になっていますね。だから、ふるさと納税がプレゼントの競争のような形になっています。しかし、人口50万人レベル以上の都市や財源のある都市になると、逆にPRは大々的にやりにくくなります。というのも、『金にまかせて』という不満ややっかみが、中小の市町村から必ず出ますからね。玄海町のような例はうちでも『ここまでやるか』と話題になりましたからね」と話す。

 小回りが利く小さい自治体こそ、やりやすい制度なのかもしれないが、「事務手続きの増加により、最低金額の2000円をせめて引き上げても良いのではないか」(前出の担当者)という声も現場ではあるようだ。

 また、納税というだけであれば、住民票を移すだけでもできる。

 国税庁が高額納税者の氏名と納税額を発表していた時代には、例えば東京で活躍する女優の藤原紀香さんが故郷の兵庫県西宮市に納税自治体を移したこともあった。ある意味で、ふるさと納税と言えなくはない。ただ、税金の使い道は指定できない。

 「ふるさと納税」は税金では日本で唯一、自分自身で使い道を指定できるのが良い点。2011年のように、納税者として、自治体のために、という点が希薄になりつつあるようだ。「ちょっとした株主優待のようなもの」(個人投資家)という指摘は意外に正しいものになっている。

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