父親から相続した割引金融債「ワリコー」を申告せず、約8300万円を脱税したとして、相続税法違反の罪に問われた、東京・巣鴨の男性(60)の初公判が9日、東京地裁で行われた。被告は罪状認否で無申告の事実は認めたが、家族と共謀していない点や、東京国税局の査察部が決めた税額などについて争う姿勢を見せた。
検察側の冒頭陳述によると、男性被告は、2011年に亡くなった父親(建設業社長)の不動産資産などの遺産について、母親、妹、弟とともに4人で相続で配分した。その際に、約2億8000万円分のワリコーを換金した上で、全員に分配し、残りを税理士費用などその他に充てたという。
また、相続を相談していた税理士事務所に対しては、ワリコーの存在を話していなかったという。父親は不動産投資なども行い、ワリコーをみずほ銀行の口座に入れていたという。
一方で被告側の主張は次のとおりだ。
・申告の有無については争うことはない。隠ぺいもしていない。
・母親、妹、弟とは共謀しておらず、個人の判断で行った。
・東京国税局査察部が決めた課税額は自分の考えよりも多い。
・納税額は所轄税務署(豊島税務署)の署長が決めるものだ。
割引金融債とは、利息額を額面から差し引いた価格で発行する金融債券。日本興業銀行のワリコーや、日本債券信用銀行ワリシンが知られている。無記名式のために常に一定の需要があり、富裕層や資産家の多くが買い求めていた。古くは、金丸信自民党副総裁が所得隠しに使っていたことで一般に有名になった。現在では、無記名式のものは新規発行されていないとされる。