銀座ナンバー1「筆談ホステス」斉藤里恵さん独占取材(1)

文字が心を揺さぶる

 「筆談ですと、会話とはまた違った楽しみ方がありますし、文章や言葉によって気持ちもより伝えられることもあります」(以下セリフはすべて筆談)

 里恵さんはそう答えたが、果たして本当だろうか。半信半疑に思う人も多いかもしれないが、実際にお互いの紙を見せ合うことで、まず段々と2人の物理的な距離は近くなるのを感じる。そうするうちに、お互いの心の距離感も縮まっていくのではないだろうか。

 「いつも健常者の方は声を出して会話しているので、筆談が新鮮でドキドキされる方もいました。ラブレターみたいだと…。また、すてきな言葉を書いていただくこともありますよ」

 会話は他人にも聞こえることはあるかもしれないが、筆談は当人同士にしかわからない。ここで秘密の会話が成り立っているのだ。2人だけの秘密を共有する楽しさ。どうしてもワンテンポ空くために動きがないように感じるが、実際に心は「もっと、もっと」と筆談による会話を欲してしまう。

 ある日の接客で、こんなこともあった。「辛い」とこぼす不動産会社役員の「辛」というメモに、横線を一本足して「幸」として「辛いのは幸せになる途中ですよ」とのメッセージを送った。男性の目からは涙がこぼれ落ちて、来店時には深刻だった表情も帰る時には笑顔になっていたという。

 こんな言葉を口にするなんて、と少し躊躇するような恥ずかしいセリフも筆談なら臆面なく書ける。

 「『辛』に『一』を足すと幸せになりますよ」。

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