世帯年収1000万円の家庭でも、50%以上が奨学金を申請したことが、東京地区私立大学教職員組合連合が発表した「私立大学新入生の家計負担調査」(2013年度)の結果によって明らかになった。
これは、2013年度に私立大学に入学した新入生家庭を対象に、5048件の有効回答を得た。対象の大学は1都5県にある15大学・短大(工学院、中央、東京経済、東京家政学院、明治、明治薬科、和光、早稲田、麻布、獨協、国際武道、東邦、筑波学院、作新学院、作新学院女子短大)。
2013年度は、年収1000~1100万円で、51.9%が申請していたことがわかった。12年、11年もともに45%以上が申請していたが、上昇傾向は止まらず5割を超えた。また、この調査カテゴリーでは最も上位階層の年収1900万円以上でも約4分の1にあたる24.2%が申請していた。
調査家庭の平均年収は901万9000円で、共働きなど2人以上が働く世帯は全体の65.4%と高く、それほど豊かとは言いにくいようだ。その現状で、受験から入学までの費用は、自宅外通学で約210万円、自宅生で約153万円で、かなりの負担になることがわかる。
◆年収と申請率
500万円未満 74.3%
500~600万円 78.1%
600~700万円 73.1%
700~800万円 66.5%
800~900万円 66.7%
900~1000万円 65.9%
1000~1100万円 51.9%
1100~1300万円 48.0%
1300~1500万円 31.1%
1500~1700万円 19.7%
1700~1900万円 25.9%
1900万円以上 24.2%
日本学生支援機構の条件では、第二種(下記参照)では、所得上限1267万円まで受給が可能なため、制度を利用しておこうというのだろうか。年収1300万円以上からは、その割合が減少していく。
奨学金種別 学力基準 給与所得世帯の年収上限
・第一種(無利子)=高校評定3.5以上 自宅通学 上限所得955万円
自宅外 上限所得998万円
・第二種(有利子)=特になし 自宅 1267万円
自宅外 1250万円
さて、年収1000万円が50%以上申請した要因としては大きく2つが考えられるが、それは学費の上昇と、収入が高い層では医学部受験の機会が増えるために申請しているではないかか。
まず、平均収入額(自宅外)は901万4000円だが、入学年にかかる費用は293万8226円となり、年収に占める割合は32.6%と約3分の1を占める。また、この調査では、東邦大学が入っており、医学部や麻生大獣医学部などが平均を押し上げているとも思われる。
二つ目の原因としては、世帯年収の打ち止め、もしくは減少にあるのではないか。1993年をピークに年々減少傾向にある。
2013 901.9万円
2012 875.2万円
2011 895.8万円
2010 885.5万円
2009 898.6万円
2008 922.9万円
2007 946.7万円
2006 944.2万円
2005 931.8万円
2000 1026.4万円
1995 1029.4万円
1993 1072.0万円
1990 928.0万円
1988 820.7万円
日本学生支援機構がまとめた、奨学金の受給率は38.2%。私立大学は37.4%で、国立大学は41.1%となっている。
入学費用を「借入れ」した家庭では、99.3%が「重い」と感じており、世帯年収1000万円クラスでは子供を大学に進学させるのも楽ではないようだ。