リクルート上場で多数の富裕層誕生と「闇株」3万株

江副育英会6万株のうち3万株が流出

 ある投資家が、江副育英会を相手取って、株券名義の書き換えを求めて一件の訴訟を起こしていたのだ(判決は、書き換えを認める命令)。株式も多数発行すれば、かならず把握できないものも出てくるが、この事案に絡んだ人物を眺めるとなかなか興味深い。

 その当時の額面1株あたり約50円だというが、まずは提訴した投資家が絡んだ株の取引の履歴は次のようになっている。これは育英会保有の6万株のうちの3万株が、それに該当する。

◆株券番号1B第1155号(売主 ⇒ 買主 取引額)
平成16年9月17日 江副育英会 ⇒ 日本創研  不明

    10月15日 日本創研  ⇒ 高須稔   1億円

  17年6月6日  高須稔   ⇒ R&A   1億円

    11月9日  R&A   ⇒ 徳江長政  1億円

  18年9月11日  徳江長政  ⇒ 緋田将士  1億円

◆株券番号1B1157号
平成16年9月17日 江副育英会 ⇒ 日本創研  不明

  17年3月11日 日本創研  ⇒ 徳江長政  9800万円

  18年9月11日 徳江長政   ⇒ 緋田将士  9800万円

◆株券番号1B第1158号
平成16年9月17日 江副育英会 ⇒ 日本創研  不明

  17年3月11日 日本創研  ⇒ 徳江長政  9800万円

  18年9月11日  徳江長政  ⇒ 緋田将士  9800万円

 ちなみに、最後の取引が行われた直前の平成18年6月の定時株主総会で株券廃止が決議されている。同社株は無効となっているが、しかし、東京地裁は名義書き換えを命じているのだ。

 日本創研は、ワールド創業者の畑崎広敏氏の資産管理会社。江副氏の肉親から日本創研に移っているのだが、これが後にミソを付ける形となった。答弁書によると、畑崎氏のたっての願いで譲渡されたが、その後は、第三者への譲渡は禁止されているものの、それを反故にして3万株とも売却してしまうのだった。

 高須稔氏は、旧加ト吉の大番頭として知られる元常務で、あの循環取引では、責任を取る形で単独犯として逮捕されている。また、緋田将士氏は、逮捕者も出したグッドウィル・グループによるクリスタルグループ買収に絡む脱税事件で、数十億円から100億円の利益をあげたとされる若き投資家だ。株券の名義書き換えを要求したのは、この緋田氏だ。

 株券があった時代の名残だが、こうした痛い話が常に付きまとうのも、また株の世界だ。

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