今年2月、カナダ政府は「投資移民プログラム」と「企業家移民プログラム」を廃止すると決定し、多くの移民申請を出していた中国人富豪の間で動揺が広がり、大騒ぎになった。ところが、この政策の抜け穴を探して、今も多くの中国人が移住し続けている実態がある。
カナダの投資移民プログラムは、現地経済を発展させる事を目的に1986年に開始された。80万カナダドル(約7500万円)を現地政府に無利子で5年間融資した場合、永住権を獲得できるというもの。特に中国からの申請が相次ぎ、その数は全体の半数以上に上っていた。
ところが、実際はこうした投資家の多くはカナダに住まず、また、起業して雇用を生み出すと行った経済への貢献が少なかった。さらに、申請書類の偽造疑惑なども浮上したことなどから、「カナダ政府の利益に合致しない」として今回の方針転換となった。だが、「上に政策あれば、下に対策あり」と言われるのが中国。そのまま黙って引き下がる訳がなかった。
ケベック州を訪問したウィリアム王子夫妻(2011年)
多くの申請者がケベックへの移住に切り替える事を避けるため、ケベック政府は年間申請数を1750件、一国からの申請数を1200件と上限を決めた。だが、フランス語が中級以上の人はこの制限にかからず、中国富豪にとっては絶好の抜け道となっている。理論上、フランス語が話せることを証明すれば、移民を申請する事ができる訳だ。
ケベックの移民庁は語学成績のねつ造を警戒しており、成績証明書の真偽を確認するとともに、申請書類をねつ造した場合、申請者は5年間申請できなくなるなどの対策を行っているという。