3億円を稼ぎ上京した新潟の美人社長 その後の売上半減からの3倍返し

リピーターを遠ざけていた

 リピーター客もかなり多く、月に1着の割合で購入してくれる人もいたそうだ。知らないうちに、清水さんのファンは、ブランドのある変化に気が付いていたのだった。だから、月次売り上げは半分になっても当然なのだ。

 「アパレルなので、見せ方の一つ一つがセンスなんです。一度ついてしまったテーストが変わってしまうと、お客さんは、ある日突然『いいの、ないな』っていうふうになってしまうんです。例えば飲食店だったら、社長の考え方が変わったりして、自分の好きなメニューがなくなっていたり、実は裏ではそういうこともよくあるんですね」

 アパレルが、どんどん新しいブランドを出していくのはなぜか。それは、清水さんの言葉の中にもあるように、一度定着したブランドのデザインテーストを変えることを避けるために、新たなデザインは新たなブランドでやれということだ。そこで、清水さんが取った方法は、従業員に仕事は任せつつも、初心に戻るべく、言うべきことは言う、ということを徹底した。また、待遇面でも給与削減など厳しい条件を付きつけなければならない苦渋の選択もした。

 原点に回帰すること。それが、ファン(顧客)を呼び戻すきっかけにつながる。良くも悪くも清水さんの個人商店から続いたテーストを全員でもう一度、共有し直すことで復活の道筋が見えてきた。

道路がない? 山奥の住所からも注文が

 銀座、六本木、渋谷、北新地をはじめ主要な繁華街はおろか、いまでは全国のほとんどのキャバクラ嬢がドレスを着用する。そのかなりの割合でSugarのドレスを着用しているのだ。みんながすでにドレスを持っている状況で、これ以上はどう売るのか。

 「順調で、『すごい』って言われていたあの時の売上が3億円で、これ以上は行かないかな、とも思っていました」

 2010年当時は、キャバクラ嬢のドレスというニッチな商品展開で注目を集める存在となり、新潟で3億円の売上高を記録し、姉妹で華々しく東京進出を果たした。トップ自らが、表にはしないが内面ではどこか限界を感じていた部分もあったのだ。だが、初心に戻って体制を整え直したことで、離れていたリピーターも帰えってきつつあったのだ。

 そんな時に起きたのが、2011年3月11日の東日本大震災。ただ、仙台市などの繁華街で働くキャバクラ嬢からも新しく注文も入るようになったそうだ。中には、地図上では道路がない住所からの注文も来るようになったという。

 キャバクラがあるかぎり、そして、キャバクラ嬢がいるかぎり注文は来るのだ。

すでに「3倍返し」達成

 「(店を)出したころは、たまたまウチくらいしかなかったんですけど、もうリアルの店舗の時代ではなくなっていたのかもしれないと思います。あと、アマゾンがインターネットで本を売っていますけれど、今からインターネット書店を出してもアマゾンには勝てないですよね。ウチのようにドレスを(インターネット店舗で)出してくる人もいるけど、続かないんですよね」

 知らない間にキャバクラドレス界のアマゾンのような存在になっていたSugar。先行者の成功を自分たちも欲しいと思い、インターネット上には類似した競合店舗が出てくるようになった。それでも、地位を脅かすほどの店舗に成長することはなかったのだ。

 結局、昨年の売上高は約10億円になっていた。3年で売り上げは3倍以上になっていた。また、従業員数も15人から35人に増えていた。あの頃の失敗はすでに十分すぎるほど取り返していた。

 だが、まだ終わりではない。

 部屋着の新ブランドも立ち上げており、こちらについても「ECの仕組みを培うことができたので、物販を色々と広めて、強い会社にしていきたいです」と清水さん。さらに「まだ10億円を超えていないので、まずは売上10億円を達成したいです」と話していた。

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