中国人富裕層が国外移住を希望する3つの要素とは、教育、環境汚染、食品の安全性だということが、ハルンレポートの調査結果で明らかになった。従来から、子息の教育では高校生から海外志向が強く、また環境汚染も意識はしていたものの、それに加えて、食品の安全性についても、自国を信用していないという実態がデータとして現れた格好だ。また、捕捉できない資産が数百億円あることも調査結果として記している。
資産防衛よりも教育、環境、食品
ハルンレポートは、ルパート・フーゲワーフ氏が始めた、いわば中国版フォーブス。中国の億万長者研究では一日の長がある。
10億元(約163億円)以上の試算を保有する中国人の超富裕層980人に聞き取り調査を行っており、まず、幸福についての質問には次のように回答している。
◆幸せな瞬間
・子供の誕生 29%
・会社設立 24.6%
・大学入学 14%
・恋愛 13%
・大学卒業 11.9%
・その他 7.8%
・会社上場 7.2%
◆最も幸せに思うこと
・健康 65.9%
・家族生活 43.1%
・他人から認知される 12.8%
・学習機会 11.7%
・愛情 9%
そして、自身や家族の健康が最も大事だと考えており、中国人富裕層ならば誰もが考える海外移住と結びつく、と言ってもおおむね間違いではないだろう。
◆海外移住の理由
・教育の機会 21%
・環境汚染 20%
・食品の安全 19%
・社会福祉 15%
・医療ケア 11%
・資産防衛 8%
・IPO 1%
・課税懸念 1%
教育と並ぶのが、環境汚染、食品の安全となっている点は興味深い。健康を重視するからこそ、やはりこの2点はかなり気になっていることだろう。大気汚染、さらには河川の汚染は、生活環境はもちろんのこと、農作物の育成においても影響は深刻だと見られる。
安全性の高い農作物の育成について、中国政府のSWFであるチャイナ・インベストメントコープは今後、農業に大規模な投資を行う方針があることも伝えられている。
また、食品加工工場では期限が切れて青カビの付着した鶏肉、牛肉を加工し、マクドナルドなどに出荷していたことが発覚したり、もはやモラルハザードは当たり前でもある。
最低限の健康的な生活さえも送ることは難しそうで、6割が海外移住を考えているのは十分、納得できる。