国税庁は今年から始まった国外財産調書の提出状況についてのまとめを発表し、全国で5539件、総額で約2兆5000億円に上ったことが判明した。その構成では有価証券が1兆5063億円となり全体の62.1%を占めていた。
国外財産調書は昨年12月31日時点で、5000万円以上の海外資産を保有者に提出義務を課した制度で、今年からスタートした(提出期限は今年3月)。
財産の分類は次のとおり。
・有価証券 1兆5603億円 62.1%
・預貯金 3770億円 15.0%
・建物 1852億円 7.4%
・土地 821億円 3.3%
・貸付金 699億円 2.8%
・その他 2396億円 9.5%
合計 2兆5142億円 100.0%
※各種別で四捨五入のため、合計が一致しない場合あり
ここで報告義務のある海外財産とは、国税庁は、相続税法10条1項、2項に掲げる財産は、この規定の定めるところによるものとしている。すべてに時価評価をすることは難しく、今後は評価に迷うものも出てくるだろう。一部珍しい例を挙げておく。
海外のリゾート施設の会員権の場合には、退会し預託金などが返還された場合には記載すべき財産に該当する。
共同所有する海外不動産で持ち分が明らかではない場合には、按分した価格で届け出る。また、借入金で購入した場合でも、時価、または見積価額から借入金を差し引くことはできない。
また、地区で見ると、東京の管轄が件数、金額とも圧倒的に多くなっている。東京管内では、1人あたりで単純平均すると、届け出金額は5億5890万円にもなる。大阪2億8100万円、名古屋2億371万円と比較しても多い。
◆管内別の件数
・東京局 3755件(67.8%)
・大阪局 638件(11.5%)
・名古屋局 457件(8.3%)
・その他 689件(12.4%)
◆管内別の財産額
・東京局 2兆989億円件(83.5%)
・大阪局 1793億円(7.1%)
・名古屋局 931億円(3.7%)
・その他 1429億円(5.7%)
申告のインセンティブとしては、国外財産調書に記載がある国外財産の相続税などで申告漏れが生じた時でも、過少申告税額などで5%減額される。一方で、罰則としては、
平成24事務年度で、海外資産の申告漏れの非違件数は113件で、前年から2件増加した。申告漏れ金額は218億円だった。1件あたりでは、4051万円となる。資産の種別としては現金の割合が最も高くなっている。
国税庁はここ数年は海外資産の把握に力を入れてきたこともあり、違反件数はかなり減少している傾向にある。