医師が「手術の執刀を引退するタイミング」について、約3分の1が、スキルの限界を感じたときだと考えていることが、医師専門サイトのメドピアの調査結果で明らかになった。
同サイト登録の医師会員7万人の中から、1278人から回答が寄せられた。スキル、体力、情熱の3要素が大きく、まさに気力、体力、技術のどれが欠けてもダメであることが
わかる。結果は次のようになった。
スキルの限界を感じたとき 422人 33.0%
体力の限界を感じたとき 318人 24.9%
手術に対する情熱を失ったとき 275人 21.5%
職場の定年に達したとき 51人 4.0%
医師を辞めるとき 43人 3.4%
その他 169人 13.2%
合計 1278人
それぞれの回答の主な声は次のとおりになる。
◆「スキルの限界を感じたとき」 422件
・自分より他の医師が施行した方が患者のメリットになると思った時(50代、乳腺・内分泌外科)
・後輩連中の仕事を見てるとまだまだだなと感じます。追い越されたと感じた時が潮時でしょうか(50代、消化器外科)
・最新の医療レベルを維持するのは難しい(50代、整形外科・スポーツ医学)
・手術手技はどんどん進歩しているので、それについていけなくなったとき(40代、消化器外科)
・限界を感じ、手術の執刀をやめました(50代、一般外科)
◆「体力の限界を感じたとき」 318件
・術後合併症に対して2、3日徹夜で対処できなくなったとき(50代、一般外科)
・体力というよりは視力が大きなカギを握っていると思います(50代、呼吸器外科)
・体力だけではなく、患者に真剣に向き合う精神力が無くなった時(40代、整形外科・スポーツ医学)
・術後急変時に十分な対応が出来なくなった時です(50代、一般外科)
◆「手術に対する情熱を失ったとき」 275件
・わたしの場合は、根気が続かなくなったこと、老眼が進んで細かい作業がしにくくなったことなどから、熱意を失いました(50代、消化器外科)
・リスクや手間を考えても、手術そのものに興味・情熱があってこそ続けられる。それらが無くなったら、手術引退と思っています(40代、脳神経外科)
・決まり切った定期手術は続けられても、術後出血で再手術が必要となった時に消極的になるようならやめ時かもしれません。気力が衰えると何かと判断が鈍ります。ついつい事なかれの方向に(40代、脳神経外科)
・情熱という表現が適切かは意見があります。体力の限界ではなく、最後は気力の限界だと思います(60代、一般外科)
◆「職場の定年に達したとき」 51件
・やはり60歳が限度と思われます(40代、消化器外科)
・責任ある手術をする上では、定年が一つの区切りだと思います(50代、泌尿器科)
・手術内容は選択されていくと思いますが、本当に手術を引退するのは、定年ではないでしょうか(30代、整形外科・スポーツ医学)
◆「医師を辞めるとき」 43件
・医師を辞める時でありたいです。でも現実は厳しいかもしれませんね(30代、産婦人科)
・医者を辞めるまで外科医であると思います(40代、消化器外科)
・今は外来手術しか対応していませんが、それまでは救急外傷や外来手術は続けます(50代、一般内科)
◆「その他」 169件
・周囲からの信頼、信用を失ったときだと思います。最近、欧米でも見るに堪えない高齢外科医の手術をどう止めさせるかが話題になっていました(40代、消化器外科)
・有望な後輩が育ってきている時。自分ばかり執刀する様なエゴな外科医にはなりたくない。外科医の職業的到達点は、完璧な助手になることだと考えている(30代、一般外科)
・医局人事により、手術の無いところへ異動になったのがきっかけです(40代、脳神経外科)