資産16億ドル(約1700億円)の大富豪でグリー創業者の田中良和氏(37)が、妊娠・中絶した交際女性から、一生消えることのない精神的な傷を負ったとして、3000万円の損害賠償を求められた訴訟の本人尋問が東京地裁で8日行われた。田中氏は業務の都合を理由に欠席、一方の原告女性は時折涙を流しながら「産んでも誰のためにもならないと言われた」などと悲痛な思いを訴えた。
この日は原告被告双方による本人尋問が予定されていたが、田中氏の代理人によると「業務の都合」を理由に法廷に姿を現すことはなかった。
訴状によると、田中氏と都内の20代女性は平成22年に知人の誕生会で知り合い、翌23年1月から交際開始。その後は半同棲生活を始めるようになった。仕事を退職後は実家に戻ろうとするがひきとめられて、赤坂や高輪などで同棲が続いた。24年11月に妊娠が判明し、話し合いをしたが、田中氏は玄関口に30万円を置いていくなどし、女性は同12月に中絶手術を行ったという。その精神的苦痛は一生残るものだとして、3000万円を請求している。
2人半同棲生活を続けるようになり、女性は「わたしのために部屋も借りてくれて、家具、食器などもすべてそろえてくれて、いっしょに生活をしていたので、(避妊しなかったことに)ためらいはなかったです。受け入れたいなと・・・」と述べた。
具体的に2人の間で結婚という言葉は出なかったが「田中さんは厳しい人であまり人を信用しないのに自分の家族の話をしてくれたり、少しは(結婚を)考えてくれているのかなと思いました。でもわたしから結婚を言うことで嫌われたくありませんでした」と証言した。
妊娠後は話し合うことになったが、「妹さんの子供さんの写真を自分の携帯の待ち受け画面にしたりしていたので、いっしょに育てようと言ってくれると思っていたのに、喜んでくれないし、産んでも誰のためにもならないとまで言われました。どうしてと聞いても、納得できる回答はありませんでした」と訴えた。
また、話し合いの中で2億円を請求した理由については「田中さんに、産んでもいいと考え直してほしかったからです」と説明。原告代理人から本当に2億円を受け取れると思っていなかったか、と質問されたが「思っていないです」と述べた。
女性は、前任者の代理人と相性が合わなかったとして一度は6000万円の損害賠償訴訟を取り下げていることも判明。田中氏の代理人から「動じなかったので取り下げたのでは」と意図を問われると「違います」と否定した。
グリーは2014年6月期通期決算で、売上高、経常利益とも減少で、最終利益も対前年比23%減の173億4700万円と業績がダウンしている。業績が下り坂の際に確かに業務とは無関係な訴訟の本人尋問に出廷している場合ではないが、一人の男として「逃げた」との印象は拭えない。