富裕層の海外移住はすでに常識化しているが、中国などアジア人の傾向として投資としてハイリターンを望むために、ロンドン、NYの不動産などを購入していることが英投資銀行バークレイズの調査結果で明らかになった。
この調査は資産150万ドル以上を保有する富裕層2000人を対象に行った。またその2000人のうち200人は1500万ドル以上保有の超富裕層だった。
1カ国だけにとどまっている富裕層は20%にとどまっており、多くが国籍を持つ国以外にも住んでいる。こうした現象を、英法律事務所キングスレー・ナプレーのニコラス・ローラソン氏は「セカンドパスポートの需要は今後も広がっていくが、富裕層にとっては強い関係性や結びつきがないかぎりはその国の市民権が必要というわけではなく、子供の教育、資産保全のためのリスクヘッジ、自由を満喫するための移住だ」と分析する。
移住先の人気都市として、ロンドン、NY、シンガポールの名前を挙げて「ウエルスホットスポット」としている。
住みたい所としては北米がNY、LA、マイアミ、サンフランシスコ。欧州がロンドン、モスクワ、モナコ。アジアが香港、シンガポール、ムンバイ。中東がドバイ、アブダビとなっている。
大まかな人の流れ先だが、それは次のようになる。
南米 ⇒ 北米 65%
アジア ⇒ 北米 43%
欧州 ⇒ 北米 38%
中東 ⇒ 北米 32%
北米 ⇒ 欧州 36%
アジア ⇒ 欧州 14%
南米 ⇒ 欧州 38%
北米を目指す流れが全体に強いことがわかるが、特にボリュームの面では中国人の動向に大きな関心が集まる。というのも、米国の投資ビザであるEB-5の中国人の申請を一時凍結、カナダの投資移民プログラムも停止になるという事態が起きている。
こうした現象について、英ランチェスター大のジェームズ・フォールコンブリッジ教授は「ロンドンの不動産ブームの背景にあるのは、ほとんどの富裕層は自分で使用するのは年に1カ月くらい。アセットクラスという見方が正しい」という。特に他の地域の富裕層よりも、中国などアジア人の富裕層にその傾向が強いという。
また、アジアの人は他地域に比べて投資でリターンをより求める傾向が強く、特に第一世代の方がよりリターンを求める傾向が強いという。そうした志向が不動産購入(投資)へと向かわせているのかもしれない。
では、今後もその傾向が続くかどうかについては、バークレイズのボン・ダエニケン氏は「もしも税制などの制度が変わるのならば、香港やシンガポールのような他のマーケットに資産を移転させることは十分に考えられる」としている。
別の調査では、今後30年で第2市民権か投資ビザを取得する人口が9万9000人、資産総額で16兆ドル(約1628兆円)に到達する見通しであること判明している。いずれにせよ富裕層による人と金の海外移転は今後も増大していくことには間違いない。