富裕層海外移住者の株式含み益にも課税検討

 政府・与党が、富裕層が海外移住に際しての課税強化を行うことで検討に入ったと、日本経済新聞が伝えている。すでに米国、ドイツ、フランスなどでも実施する「出国税」の検討はこれまでにもされてきたが、保有株式の含み益に対しても課税方針が盛り込まれるなど、年間100人程度が対象者になると見られている。2015年度の税制大綱に盛り込む意向。


国税庁
 日本国内では株式の売却時に利益に対して合計20%課税されるが、株式を保有したままでキャピタルゲイン課税のない国に移住して売却すれば、税率が0%になる。

 2012年のフェースブック上場の際には、創業メンバーで元CFOのエデュアルド・サベリン氏が米国籍を外れてシンガポール籍になっていた。これで結果的にキャピタルゲイン課税の義務がなくなり、世論の大きな反発を招いたこともあった。

 日本では、ベネッセHDの福武總一郎氏がニュージーランド、HOYAの鈴木洋氏がシンガポールに居住し生活拠点を移すなどしているが、自社株の大株主でもあり、こうした人が対象になると見られる。

 出国時に課税する「出国税」の方式は、国内法のみでの対応が可能でもあり、有効な策とされ研究がすすめられてきた。
 
 きっかけは、武富士創業家の相続人による居住・非居住を巡る「東京高裁平成19年(行コ)215」の贈与税決定処分取消請求事件、「東京高裁平成19年(行コ)第342号」の所得税決定処分取消請求事件。これ以降、国税庁は富裕層、海外、無申告を重点テーマに研究を行ってきた。

 また、国税庁は国際業務課を通じて海外情報の収集、東京国税局には超富裕層を専門に扱う部署を新設するなど、富裕層の資産の海外移転に対して様々な策を打っている。

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