伊大手自動車メーカーのフィアットクライスラーグループが29日、傘下のフェラーリ分離独立させ、株式10%を欧米の市場で上場(IPO)させることを発表した。残り10%をフェラーリ家に、80%をフィアットグループの株主に割り当てるとともに、25億ドルの転換社債を発行する。この資本政策でフェラーリの筆頭株主になるのは、38歳のイタリア人男性となりそう。
元々、トラクターなどの農機事業で高い価値を持つフィアットグループだけに、自動車部門の再建が長年の課題であった。フィアットのマルキオンヌCEOは「フィアットとフェラーリが別の道を歩んでいくことは正しい決断」とコメントした。
さて、フェラーリの時価総額だが、2010年9月に米NYタイムズが試算した時価総額は31億ドル。今年5月にマルキオンヌ氏は46億ドル~75億ドルだと述べている。そして、この日のCNBCは50億ドル~60億ドルレベルとしている。予測レンジに幅があるため定かではないが、いずれにせよその10%が上場される。フェラーリコレクターにとって、フェラーリ株もコレクション対象になるのかどうか。
同グループの高級車部門にはマセラッティが残ることになるが、実質的にはフィアット株主にフェラーリ株は割り当てられるために、フィアットの筆頭株主がイコール、フェラーリの筆頭株主となる。フィアットの上位株主は次のとおり。
エクソール 30.05%
ベイリー・ギフォードCO 2.64%
ヴァンガード・インターナショナルグロースファンド 2.00%
中国人民銀行 2.00%
エクソール(Exor)とはユダヤ系イタリア大富豪のアニエリ一族の資産管理会社。サッカーの名門ユヴェントスのオーナーとしても知られる。そのアニエリ一族とは、過去にもフェラーリの独立、さらにはF1の運営権の取得を計画し動いたこともある野心家でもある。今回の分離独立にはアニエリ一族の意向が大きく働いているだろう。
エクソールはフェラーリをフィアットグループからの分離に対して前向きであるとこれまでに伝えられてきた。アニエリ一族は過去にはフェラーリの経営に参画した歴史があり思い入れもある。さらに、フェラーリの筆頭株主の座を手にした上で、F1の運営会社である社フォーミュラ1マネージメントをバーニー・エクレストン会長から買い取るという計画もあった。
エクレストン氏の手法への批判もあり、さらには同氏が80歳をすぎ高齢のために、今後再び野望実現に向けて動きだす可能性もある。