5億円の運用損は自己責任に 投資で10億円以上失った国民的英雄

「一生をかけて5億円は取り戻します」

 「ブティック型のプライベートバンクでは有数の名門」。

 同業界の関係者が1890年創業のジュリアス・ベアをそのように評する。2006年当時は、香港にアジアのヘッドクォーターがあり、日本には拠点がなかったために、「営業担当者も香港などから、旅行という表向きの名目でよく日本に営業に来ていましたよ」(同)という。ただ、営業拠点がないだけに、今回のような仲介者を何人か持ち、マージンを支払って顧客を紹介してもらっていたという。


 そんな名門PBが組成したファンドも、サブプライムショック、リーマンショックと2007、08年の二つの金融ショックの前ではすべもなくどうにもならなかった。

 担当者は、金本さんを顧客に持つことは「誉でした」とも証言している。金本さんの証言によれば、担当者は阪神がキャンプを行う高知県まで足を運び「一生をかけて、5億円は取り戻します」と頭を下げたという。

 ジュリアス・ベアの香港のCOOを交えた赤坂プリンスホテルでの会席では「例えば孫さんとか、他のお客さんの預けているお金と一緒に運用も考えている」という話も出ている。日本一の大富豪でソフトバンクの孫正義氏の名前も出しているのだが、金本さんとは今後も関係を継続していこうとの態度を見せている。

 こうした営業は、別の業界関係者は「契約書には書いていませんが、損失が出たら他の何かで補てんをしようとします。もちろん、必ず儲かるわけではありませんが、日本の証券会社で言えば、IPOの抽せんを割り当てるとかですね」という。

 金本さんは元々、クレディ・スイスの預金が満期までに2000万円ほどの利益が出たので、他に良い投資先はないかということで紹介されたのが、ジュリアス・ベアのファンドだった。将来への不安と欲が冷静な判断を狂わせてしまったことは想像に難くない。

 自己責任を受け止めることができない投資ならば、最初からやめておいた方が良い。

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