海外富裕層がスイスから離脱も? 「一括税」廃止の国民投票

OECDからはすでに圧力

 一括税に関して最も歴史が深いヴォー州が最も多く1396人。納税額は2億780万スイスフランにも上っている。だが、問題がないわけではない。不動産価格をはじめとして物価の上昇、また、自治体によっては人口が増加しているにもかかわらず、税収が減少したことで公共予算が減少したところもあるという。


 すでにチューリッヒ州で2009年に住民投票が行われ2010年から廃止になった。それがきっかけて州を去って行った外国人富裕層もいたとされる。そして制度廃止はここだけにとどまらず、追随する州も現れ、すでにバーゼルシュタット、バーゼルラントシャフト、シャフハウゼン、アペンゼルイナーローデンも廃止になっている。

 ちなみに、チューリッヒの投票の結果だが、有権者の52.9%が廃止に賛成したといい、僅差であったこともうかがうことができる。

 スイス国内には、世界のオフショア資産の26%にあたる2兆3000億ドルの資産が集まっているという別の民間統計もある。しかし、近年の国際世論や動向を背景に、スイスは銀行機密に対しての圧力にはすでに屈するなど、課税逃れ、さらには節税への風あたりは強い。

 さらに、この一括税についても圧力はすでにかけられており、実は2012年にOECD(経済開発機構)がスイスに対して、制度の廃止を呼びかけたこともあったほどだ。結果次第では、海外富裕層にとっては以前ほど居心地の良いスイスではなくなったとの印象を与えることは確実だ。

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