アマン東京オープン、過去の幻の日本進出計画

 富裕層からの支持を集める世界有数のラグジュアリーリゾート「アマンリゾーツインターナショナル」が12月22日、「AMAN TOKYO」(千代田区大手町)として日本国内に初めて上陸する。この計画は、2009年の発表から5年を経過してようやく実現。さらには来年9月に京都・鷹峯での開業を目指すが、これまで日本国内でも多数、計画は出ては消えるという紆余曲折を経てきた。では、どんな計画があったのか。


アマンプリ
 アマンリゾーツについてあまり詳しい説明はここでは必要はないだろうが、簡単に言うと、1988年、タイのプーケットに「アマンプリ」をオープン以来、アジアの主要都市を中心に展開し、東京で27軒目となる。東京は異色な位置づけで、というのも大都市の高層ビルの中に、リゾートを作るという相反する概念を融合したという意味でも世界から注目されている。

 アマンはいわゆる普通の場所に建築されることはなく、本当の意味でのリゾートを追求するために困難な用地取得や建築制限など様々な障壁を乗り越えなければならない。過去の日本の幻の計画は、その困難さを表してもいる。

◆京都市
 金閣寺周辺に位置する、破産した織物屋の敷地。著名IT起業家が競売で競り落とし、アマンの事業主体に転売された。「アマンニワ」をテーマにデザインされたものの、都市計画法上の問題、さらには交渉経緯の失敗などで話は潰れた。また、事業パートナーだった、不動産会社アーバンコーポレーションの倒産も大きかった。

◆静岡県熱海市
 東京から約1時間の恵まれたアクセスの温泉街・熱海の山側に「アマンタニ」と呼ばれるプロジェクトが計画された。競合する星野リゾート「界 熱海」の斜面のさらに上方に位置し、太平洋の眺望が抜群だったことは想像できる。結局は用地取得で、地主と折り合わずに採算ベースに合わなかったことで断念した。

◆千葉県いすみ市
 別名「アマンウミ」。房総半島の海岸線に広がる眺望が自慢のプロジェクトだったようだ。89年施行のリゾート法に基づいて整備構想として持ち上がるも99年に中止。2007年に再び始動したが、資金面で断念している。
※「アマン伝説」(文藝春秋、山口由美著)より

 また、千葉県の計画については、平成19年の自治体の議事録に残っており、千葉県環境審議会運営規定第9条によって公開されている。

 南房総国定公園の自然景観が豊かな地で、植物は希少種も多く、また、動物もオオタカ、ニホンリスなど希少種の生息地となっている。計画では、開発面積は約3.3ヘクタール、建築面積約9000平方メートル、延べ床面積約8200平方メートル、最大宿泊数1日あたり88人だという。

 事業者のミッドリームは次のように部会であいさつしている。

 「ゼッカ氏も環境をたいへん重要視していまして、自然環境との共存、あとは地元文化との密着をテーマにして、世界各国のリゾート開発をしております。ゼッカさんいわく、木を1本切ったら、人を1人殺したと思えと。それほど自然を重要視しているお方なので、今回の開発に関しても自然の中に遠慮して建物が建つという考えで進めていく予定でございます」

 なかなか計画は難しい面もあり、委員からは数多くの意見や要望が出された。一部を抜粋すると次のようになる。

・守衛ではなく24時間、責任が取ることができる人間が常駐できる設備は
・部屋数が30くらいで、経営採算に乗るのか
・写真で見ると虫一匹いないような施設だが、どういう形で駆除するのか
・サンショウウオの幼虫が区域外に80個体見つかっているが本当に影響はないのか
・地震、津波、地滑りなどで構造的に絶対大丈夫か
・幅2メートルの崖路をカートで移動しなければならないが安全面は大丈夫か

 以前にこの地はゴルフ場建設計画も出たというが計画は中止になっているという。世界最高峰のリゾートを建設するまでの苦労や裏側をうかがうことができる。

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