ワリコー隠しの相続税法違反に有罪判決

 父親から相続した割引金融債「ワリコー」を申告除外し、約8300万円を脱税したとして相続税法違反の罪に問われた、東京・巣鴨の男性の判決公判が21日、東京地裁で行われ、小池健治裁判長は「計画的かつ巧妙で悪質」として、懲役1年、罰金1700万円(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡した。

 判決によると、被告は2011年に亡くなった建設会社経営の父親の遺産について、自身、母親、妹、弟とともに4人で相続配分した。その際に、みずほ銀行の金庫に保管されていた約2億8000万円分のワリコーを換金した上で、全員に分配し、残りを自身の仕事場に隠すなどしていた。また、相続を相談していた税理士事務所に対して、ワリコーの存在を知らせていなかった。

 被告のいくつかの主張を行ってきたが、それらは認められなかった。まず、母親、妹、弟とは共謀せず個人の判断で行ったというものだが、「4人で秘匿する意思があった」と認定された。母親は認知症だと診断されてもいるが、それも「相続申告は自分で行っており、当時は判断能力はあった」などとして事情は認めていない。

 東京国税局査察部が決めた課税額についても、国税通則法に則り、納税額は所轄税務署(豊島税務署)の署長が決めるものだとも主張していた。これについても「相続税額を秘匿し過少に申告して納付していないなど、独自の主張は採用できない」などとして認めていない。

 今回は、ほ脱率が約87%と高かったこともあり、悪質ととらえられたことで有罪となった。ただ、前科前歴がないこと、本税、重加算税を納付済みであることが考慮され執行猶予がついた。

 割引金融債とは、利息額を額面から差し引いた価格で発行する金融債券。日本興業銀行のワリコーや、日本債券信用銀行ワリシンが知られている。無記名式のために常に一定の需要があり、富裕層が買い求めていた。古くは、金丸信自民党副総裁が所得隠しに使っていたことでも有名になった。現在は新規発行はない。

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