米アップルが今週、65億ドル規模の社債を発行した。株主還元策のための資金をねん出するのが目的だが、1780億ドルという巨額のフリーキャッシュを持つ企業がこんな資本政策を取るのも税率にある。この問題について、米オバマ大統領が2日議会に提出した予算教書の中で触れられている。
アップルがすでにアイルランド、ネバダ州などの実態としては幽霊会社に近い3つの子会社を利用して海外にキャッシュを還流させていることは、一昨年に米上院の調査で明らかになっている。次の3社。
・アップルオペレーションズインターナショナル(AOI)
・アップルセールスインターナショナル(ASI)
・ブレイバーンキャピタル
アップルだけが特別なわけではなく、グーグル、アマゾン、ウォルトディズニー、スターバックスなど多くの企業も行っている。そのアップルだが、米国外に積み上がっているキャッシュの総額は約1780億ドルにも上る。海外で貯め置かれているだけになっており、これが米国にとっては大きな損失になると批判の的になっている。
このキャッシュを米国内に還流させるためには新たに税金がかかる。せっかくの節税も水泡に帰して、法人税35%が掛る。アップルのキャッシュについては、これまでにも大物投資家デビッド・アインホーン、カール・アイカーンの両氏らが株主還元策を迫ってきた。
ただ、ティム・クックCEOも株主還元策を行うことを決めたのだが、なにぶん海外のキャッシュを還流させるよりも、国内で社債を発行した方が安くつくために発行しているにすぎない。
そして、アップルのような海外の子会社に貯め込んだキャッシュについては、19%の課税を行う。
では、このキャッシュを米国内に戻して再投資する場合については、14%課税する。
つまり、米国内への投資を呼び込むことで雇用を促進し、納税を増やすということが狙いとなる。もちろん、上院・下院ともに共和党が多数を占めており、少数与党のオバマ大統領の案が通るかどうか。