今後の高齢化社会にともなって世は大相続時代に突入するが、日本で今後20~25年の間に発生することが見込まれる相続で、地域外に流出する資産は117兆円で、そのうち6兆円は海外に流出する可能性があることがわかった。域外に資産が動くことで地方によっては潜在的な経済力の低下に拍車がかかる恐れもある。それと同時に、海外への移転も見逃すことはできない。
この調査結果は、総務省の「国勢調査」「全国消費実態調査」などを基にして三井住友信託銀行が作成したレポート「相続で多発する家計資産の地域間移動」による。まず、地域間による差が大きく開いていることがわかる。
資産流出率10%の未満の自治体は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県のみ。東北や四国は25%以上が流出する県も多く見受けられる。子供世帯が親世帯と別居して東京圏に居住している場合などが想定されている。東京圏の流出が少ないのは、別居の場合でもともに東京圏に居住しているケースが多いためだ。
では、金額ベースで見ればどのくらいになるのか。下の図表によると、全国の家計資産保有総額約766兆円のうち、各地方から東京圏には51.4兆円が移転する試算になる。図表からは読み取ることはできないものの、親とは別居して東京圏で居住している子供世代の相続が大きいと見られる。
また、都内でも不動産の優良物件はすでに、地方の名士や富裕層が保有している場合も多く、これから竣工する物件も多いことから、地方の富裕層にとっては相続対策で動くきっかけにもなりうる。
東京圏に多く移動する地域は、中部・北陸が9.9兆円、北関東が7.7兆円、大阪圏が7.3兆円、東北が7.1兆円となっている。相対的に西日本からの東京圏への移転は少ない。
では、東京圏はどこに移転しているかというと、234兆円はそのままとどまっている。大きな流入元である中部・北陸に戻る資産も3.7兆円と多い。次いで九州に2.7兆円が動き、そして気になるのが海外の2.5兆円だ。
外務省の海外在留邦人数調査統計から、キャピタルゲインがない国への永住はここ十数年では2倍以上になっていることがわかっている。ただし、今回のレポートが作成されたのは昨年であり、それ以降、政府が様々な対策を打ち出していることで、今後の行方にどの程度の影響を与えるのかはわからない。
国外転出する場合は7月から1億円以上の金融資産を保有する富裕層を対象に、税金を課す「出国税」制度を施行する方針。
また、シンガポールの調査会社ウェルスXが行った調査結果でも、日本人の資産30億円以上の超富裕層の総資産のうち1兆6450億ドル(約200兆円)が動くと推計されている。