馬券の払戻金を申告せず所得税約5億7000万円を脱税したとして所得税法違反罪に問われた大阪市の元会社員男性(41)の上告審判決で、最高裁第3小法廷が、男性の購入手法を雑所得と認定し、約30億円の馬券購入費用を経費であると認定し、検察の上告を棄却した。これで馬券を経費と認められることになり、馬券で富裕層になるというミラクルな道を閉ざす徴税権力に一つの答えが示された格好だ。5月には東京地裁で、78億円の払い戻しを受けた北海道の男性の判決も予定されており、こちらに触れておきたい。
「2年で1億円を超える」宣言を有言実行?
まずは、大阪の男性の最高裁判決から。
「たくさんのレースに手を出し、かつ回収率110%以上を維持できれば 数年で億万長者になれるってこと。条件を満たすことは難しいけど、挑戦し甲斐はあると思う」
これはインターネット上で、手法がそっくりだと言われた「卍」と名乗る人物の決意の書きこみだ。年間約1000レースくらいに投資を行い、10万円の元手が、2年で1300倍となり、1億円を超えるという書きこまれている。もしも2人が同一人物ならば、有言実行して富裕層になったことになる。
男性は3年間で累計約28億7000万円を馬券購入につぎ込み、累計約34億7800万円の払い戻しを得た。純利益は差し引き約1億5500万円になるが、実際に大阪国税局から課された金額は、地方税、延滞税も含めて10億円を超えた。
そもそも純利益以上の税額が課されるのはなぜか、それは経費の参入方法にある。つまり、ゲーム性が高い一時所得か、継続的な雑所得か。前者の一時所得は国税庁の主張で、後者の雑所得が男性の主張だ。一時所得では、当たり馬券のみの購入にかかった費用が計上され、外れ馬券の購入費用は無視される。
男性の代理人は「所得税法で営利目的の継続的行為は一時所得には当たらない」と主張してきた。
最高裁では、一時所得ではなく、FXなどの投資と同じように営利目的の継続的な行為として、雑所得と認定したのだ。本来の課税額は約5200万円に減額された。ちなみに、男性と大阪国税局の解釈は次のとおりとなる。
◆男性の主張による購入金額(総経費)
17年 9900万円
18年 5億3800万円
19年 6億6700万円
20年 14億2000万円
21年 7億8400万円
◆大阪国税局の経費総額
17年 600万円
18年 1800万円
19年 3200万円
20年 6500万円
21年 3100万円