「馬券富裕層」誕生は想定外だった国税庁、78億円馬券男は?

馬券長者誕生は想定外だった国税庁

 昭和45年の参議院大蔵委員会で、当時の国税庁長官・吉國二郎氏が、一時所得か事業所得か、について次のように言及している。「御承知のように、ギャンブルの所得は一時所得になるわけでございますが、もちろん常習でやっておればそれは事業所得になる場合もございます」と、事業所得の可能性についても言及しているのだ。

 だが、「手元に資料がございません」と統計がないことを断った上で、25%のテラ銭を差し引いてから、「本質的には総体としては損なわけでございますね。ですから、うまくやった人はどのくらいもうけたかというのは、これは全く事実に基づくので、推計不可能であろうと思います」と、申告するまで稼ぎ出すことは難しい旨を述べている。

 さらに「理屈を申しますと、ギャンブルも調べるべきかもしれませんが、税務署の現在の態勢では、むしろより大きい脱税をもし見のがしておるとしますればたいへんな問題でございますので、そちらのほうに集中をしておるのが実情でございます」と答弁。

 公営ギャンブルで儲けている人は把握していないが、そこを調べるよりは他をあたった方が良いだろうという趣旨の意見を述べているのだ。当時としては、今のような何人もの馬券によって富裕層になった「馬券長者」が出現するとは思いもよらなかっただろう。

 新手の富裕層には徴税権を振り回して、担税力を超える納税を迫ることもある国税庁。ただ、今回の最高裁判決は今後に向けて、馬券長者への理解を醸成したことになるだろう。

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