日本アイ・ビー・エムの持ち株会社が約4000億円の申告漏れを指摘され課税処分されたことを不服として処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁で25日行われ、山田俊雄裁判長は、一審判決どおり国の控訴を棄却した。
当時の持ち株会社が自社株の売買を行った上で、連結納税を併用して損失を計上たことを、東京国税局は、持ち株会社の位置づけを課税逃れを行うためのペーパーカンパニーだとしていた。しかし、当時としては経済的合理性があると一審では認められていた。
子会社IBMエイピー・ホールディングス(東京都中央区)は、米国IBMから購入した日本IBMの株式の一部を日本IBMに売却。その際に約4000億円の損失を計上し、さらに連結納税制度と組み合わせることで、IBMエイピーの赤字と日本IBMの黒字を相殺していた。
この利益(みなし配当など)と株式譲渡損を組み合わせた節税スキームは、後に禁止されることになったが、当時は禁止されていなかった。東京国税局側は、課税逃れ意図があり、エイピーホールディングスに事業実態がないなどとして処分に踏み切った。
これまでの企業側の主張が認められた主な例は次のようなものがある。
◆ホンダ 2014年
ブラジル子会社との取引で利益を移転したとされたが、130億円の追徴課税がなされた。東京地裁はホンダの主張をほぼ認めて、75億円の課税が取り消された。
◆武田薬品 2012年
米子会社への商品供給価格が低すぎると更正処分を行ったものの、異議申し立てを行い、処分を取り消した。申告漏れ1223億円のうち977億円を取り消した上で、570億円が還付された。訴訟ではなく、異議申し立てを国税庁が認めたレアケース。
◆武富士 2010年
香港在住の創業家長男への財産贈与で1330億円の追徴課税したものの、当時の法律要件を満たしていた長男の言い分が最高裁で認められ、400億円の還付金を足して額の支払いとなった。
◆旺文社 2007年
同社のオランダ子会社が保有するテレビ朝日株をルパート・マードック氏に売却した際のの株式の資産評価額が課税超と異なった。107億円の追徴課税がなされたが、差し戻し控訴審で旺文社の主張を認めた。