社長が後継を意識する年齢は50歳、後継まで課題山積「課題なし」は1割未満

 経営者が後継者を意識し始める平均年齢は50歳で、64歳にはバトンタッチを予定と考えていることが法政大学大学院中小企業研究所とエヌエヌ生命保険の共同調査結果「中堅・中小企業の事業継承に関する調査研究」によって明らかになった。また、後継候補については、「ふさわしいなら誰でも良い」と考えている人が4割に上り、血縁にこだわらない傾向が強まってきている。その間の課題だが、何もないと考えている人はわずか1割未満であることもわかった。

 この調査は、全国に所在する従業員10人以上1000人未満の中堅・中小企業の社長727人を対象に、インターネットと郵送で実施したもの。期間は昨年7月~8月。

 別の調査になるが、帝国データバンクによる「2015年の全国社長分析」では、平均年齢が年々上昇する傾向にあり、過去最高の59.0歳だった。高齢化は止まらず事業継承は大きな問題となっている。

 自身の後継者を意識し始めた年齢は50~59歳が44.5%と最も多く、40~49歳で26.8%が続き、40、50歳代で7割以上の経営者が後継者について考えていることがわかる。30代でも9.4%が後継を考えていることもわかる。そして、実際に後継者にバトンタッチする年齢だが、60歳代が最も多い。

50歳未満 1.8%
50~54歳 3.4%
55~59歳 9.4%
60~64歳 23.2%
65~69歳 27.0%
70歳以上 10.6%

年齢ではなく後継者が~ 22.6%

 また、後継者の人選についてだが、子供は36.5%。ふさわしい人物なら誰でも良いという意見の43.7%を下回った。親族以外の社員は21.0%となっており、血縁関係がすべてではなく、ふさわしい人物という方向にシフトしてきているようだ。

 実際に考え始めて十数年で後継者のバトンタッチを行っているが、そこに至るまでに問題もある。大きくわけて、経営者の経営能力向上、後継者の人間力向上、後継者が未定という三つとなる。特に課題はないと答えた人は9.6%にとどまる。

経営者の経営能力の向上 36.8%
後継者の人間力向上   33.1%
後継者が未定      32.9%
後継者のバックアップ体制30.8%
事業構造の改革     23.0%
財務構造の改善     22.4%
銀行借入の個人保証・担保対応 16.8%
経営権の円滑な譲渡   16.0%
個人所有株式の譲渡   15.7%
役員体制の見直し    13.4%

 法政大大学院中小企業研究所所長の坂本光司教授は『事業継承がスムーズにいった事例、失敗事例を研究していますと、まずは親族や社員以外にも第三者や事業売却、M&Aといった多様な継承パターンがあることを認識することが大事です。そして計画的、段階的に継承を進めていくことです。後継者の育成には5~10年かかりますので、経営者の知力、気力、体力が衰えてからの継承は遅すぎます。バトンタッチのタイミングは重要なのです」とコメントする。

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