中国共産党中央統一戦線工作部はこのたびの会合で、SNSでのつぶやきにも配慮をするよう注意喚起を行った。これは中国では経済活動を担う世代が50代が中心となり、近く事業継承や相続の問題に直面するところで、その2代目、3代目のつぶやきにくぎを刺す格好だ。
そのSNS主とは、中国ナンバー1の大富豪である王健林氏(60)の長男・王思聪氏(27)だ。名門・王家の三代目にあたる思聪氏はこれまでにも、様々な騒動をSNSで起こしてきた。例えば、犬を相手に卑猥な行動と言動をしたり、女性を選ぶ基準を卑猥なもので行ったり、あるいは、自身の盛大な誕生日パーティーの様子などもアップされている。
◆「犬を●●する練習」中国一の大富豪長男がまた「卑猥投稿」トラブル◆
習近平国家主席の下で、共産党幹部や役人、富裕層らが行う不正の粛正に取り組んでいる中、こうしたイメージダウンを避けたいという狙いが見えてくる。同工作部は党中央委員会の下部組織で、工作や幹部養成などを行う部門で、過去には周恩来も部長に名前を連ねたこともある。
アップルウォッチの画像投稿の直後に、党中央統一戦線工作部のHP上に会合の発言が掲載された。これは全体としては、民間企業に対しての腐敗防止への注意喚起メッセージを発したものだが、その中で「企業は市場の主役であり、起業家はその開発の主役」であるとして、ウェイボなどSNSによる「つぶやき」にも触れており、「つぶやきによる小さな出来事が大きな問題に発展することを防ぎ、良いイメージを形成するよう努めること」と幹部が述べている。
中国の民間企業は50代が中心で、その約8割が、今後10年以内に後継者の問題に直面すると「HURUN REPORT」でも試算されている。中国国内でも元々、「富二代」という呼称があり、これは、いわゆる金持ちのボンボンを表している。
王思聪氏は、祖父が中国人民解放軍の英雄でもあり、父はワンダグループを起業し中国ナンバー1の大富豪に上りつめた華麗な血族の出身。幼少期から海外で教育を受け、英ウィンチェスター大を卒業後は、ワンダのいくつかのプロジェクトの責任者などで事業にかかわってきた。現在は、父から出資を受けたプライベートエクイティ会社プロメテウス・キャピタルを創業し、ゲーム会社なども経営している。ワンダの持ち株会社の株主でもあり、もちろん一人息子ということで後継者になることは確実視されている。
アップルウォッチの投稿が注意喚起のきっかけになったかどうかは判明しないが、党から目を付けられるにも仕方がないか。親が教育に失敗した息子に対して、国家が注意をしてくれるという体制は、親にとってはある意味では有りがたくもあるのだが…。